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「冬の童話」白川道

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「冬の童話」白川道
臆面も無い直球の強さって、ある。
この小説「冬の童話」の物語力にもそれは
いえている。若くして成功をおさめているが
暗い生い立ちを隠して生きている40代社長が、
20歳そこそこの貧しいが美しい女の子と
ひょんなことから知り合い、お互い、この人
しかいない!と強い愛情を抱く、という、
韓流ドラマ風の切ないラブストーリー。


悪く言えば手垢のついたようなエピソードの連発だし、40代と20代の
年齢や生きている世界をこえての純愛まっしぐらぶりは、読んでいるほうが
赤面モノなところもちょっとあったりした。でも、読んでいて不愉快に
ならないのである。作者が「これで感動するでしょ?」とドヤ顔でじゃなくて、
まじめに「こういう一途な愛って素晴らしいんです」と書いているような
ごまかしやウソのない(お話は、頭の中で組み立てたよくあるパターンなのに)
感じが悪くなくて、最後まで心地よく、それなりに切なさを覚えたり登場人物に
愛着を覚えたりしながら読み終えた。社長を支える部下、世慣れているようで
ヒロインに優しい先輩女性など、脇役にまでその作者の愛情は丁寧に注がれていて
個人レベルのラブストーリーに暖かなふくらみと広がりをもたらしている。
よくあるメロドラマ風なのだが、なんだか「ベタじゃん!」と笑い飛ばすには
しっとりと何かが確実に自分の中に残った、そんな印象的な1冊だった。

定価1800円→実感価格900円
実感価格、というか、文庫で900円とか出しても惜しくない気がする。
何年か後にすごく荒んでるときにふと読み返したくなるかも。
by tohko_h | 2010-12-02 00:29 | reading