「苺をつぶしながら」田辺聖子

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「苺をつぶしながら」 田辺聖子
なんやかんやいって「言い寄る」→
「私的生活」→「苺をつぶしながら」
と、乃里子の30代前半~半ばを
描いた3部作、読み切ってしまった。
この3冊目では、乃里子が再びの
独身生活を満喫しつつ、もと夫と
新たな友情を築いていくのだが、
その「友達バージョン」な形が
とても魅力的なのだった。


男女の友情と言うと、お互いに異性としてタイプじゃないけど気が合って…
みたいなケースもあると思うんだけど、乃里子と元夫の場合はものすごく
タイプだし実際に会話と体の相性がいい、とわかりぬいていて、だけど
一緒に暮らせない、という結論に1度至ったうえでの友情。ちょっとあやうい
感じが楽しそうで、この人たちには似合っている。たぶん、親戚づきあいとか
子どもどうするとか、そういう話までしないといけないのがしんどかったわけで
おいしいどこ取りでご飯でも仲良く食べてればいつまでもふたりとも幸せなのだ。

だからといって、それは永遠に続くのか。
乃里子のもと夫はいわゆるいいとこのぼん、で、たぶん、ちゃんと跡取りの
こととか考えないといけない立場にあるわけで。若いお嫁さんを数年以内に
貰う確率がかなり高い。その嫁にしたら、乃里子の存在って、ものすごく
けったいだし、2度と会わないでほしいと願うと思うんだよね。
大人なふたりはそれを分かってるはず。てことは、この新たに獲得した
ステキな友達づきあいは永遠じゃないって知ってるわけだ。その切なさ
はかなさがまた物語として素敵だな、と思った。

このシリーズ、3冊続けて読むと、ひとりのヒロインの「自由な独身時代」
「つらかった結婚生活」「再び娑婆に出てはつらつと暮らす独身時代…
孤独も知った上で」と、全ての立ち位置での心模様が描かれていて、
それぞれは浅かったり、ちょっとなーって思うんだけど、読み切ったあとだと
「自分の今いるところは、自分が好きで選んで幸せって思えるところなのか」
とか、ちょっと考えてしまう。好きで面白かった、という小説とは違うけど
なんだか印象に変に残り続けそうな小説だ。

定価630円(税込)→実感価格630円
最後は適正価格じゃん!と思えました。1部の前半のやりたいほうだいぶり、
2部のつまんなそーな結婚生活(まあ、それが破たんするっていうテーマなので
つまんなくて不穏、というのは当たり前なんだけど)、と、我慢して読んできた
意味は、たぶんあった。と思う。
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by tohko_h | 2010-12-21 13:30 | reading