3月11日(金曜日)その3 19時から22時まで

…すし詰めのバスになんとか乗せてもらって(今までバスって普通にお金払って
乗るものだと思ってたしたぶん実際そうなんだけど、この夜に限っては「乗せて
もらった」という感じがすごくした)一安心。

しかし、不安と苛立ちにさいなまれた人たちがぎゅうぎゅうで狭いところに、と
いう、心理的にキツイできごとがたくさんありました。

私が乗ろうとしたときに「無理よ、閉めちゃって」と冷たい声でやめさせようと
した通称「ザーマス」(なんとかざます、とかいうのが似合いそうな口調と声が
嫌味な感じから命名)。この人が、ものすごくおしゃべりで、周囲の人たちに
「私の家、下北沢なんですよ。下北はゆれてないといいなー。私、液晶テレビ
買ったばかりだから心配で」(他の客に気を配らずテレビの心配って何様?)
「だから、池袋から、バスで新宿に出て、そこから下北。意地でも帰るわ」
(他の人が乗るのを拒否ってでも意地でも帰りたいのね)、
バス停で停まって誰かを下ろしたときには(降りた人数だけ乗せる、という
壮絶な状況でした)「もう停留所無視して一気に池袋まで走って欲しいわよね」
(だったらお前が降りて一気にどこにでも走り去ってくれよ)と、不快感を
撒き散らしていたのです。

あとは…私の真後ろに立っていた女性グループが「池袋からもかなり歩くから
自信が無いわ」「頑張りましょう」と励ましあってるのを聞いて、お節介かなと
思いつつ、友達からメールで教えてもらった「池袋だと立教大学が避難所として
あいていて毛布も貸してくれるらしい」という情報を私が伝えました。すると
「まあ!家族に電話して車も考えるけど立教大学ね。おぼえておくわありがとう」と
言ってもらえました。それでもザーマスは「私は何があっても帰るわよ」と
ひとりでイキがっています。いや、別にあなたには教えてないし。
この女性グループは親切な中高年グループって感じで、具合が悪そうな咳を
していた若い女の子に飴をあげたり、なんか自分たちで気持ちを保とうと
努力されていて、落ち着いておられました。それにひきかえ…

それはさておき、5年くらいなんとなく疎遠だった関西の友達(ケンカしたとか
じゃなくて、忙しくてメールとかお互いしなくなった)からメールが来て
「ホントに心配してる」とか書いてあったのは嬉しかったな。

バスをめぐる人間模様が、色々つらかったです(主にザーマス関連)。

停留所に停まっても満員で乗せられないし、徒歩の人もたくさん頑張って
歩いてるし車も混雑していてとても進むのが遅い。もちろん体力的には
歩くより全然楽したわけだけど、精神的に病みそうな空間。

ある停留所で待っていた男性は、運転手さんがドアを開けて「ごめんなさい
もう満員で乗れないんです」と謝ったのに対し「俺、もう1時間半待ってる
んだよー乗せろよ」とバスをガンガン蹴って抗議。「乗せろよこのケチが」と
罵倒されても運転手さんは「いいですよ、私に腹が立ったなら、会社に連絡
してもらっても。私は都バスの○○○○です(名前をフルネームで)」と冷静。
それは職務を全うされていて立派だったのですが、乗客の中から「そうだ
そうだ!」「俺なんて2時間待って始発で上野から乗ってやっとここまで
来たんだ」「早く閉めろ馬鹿野郎!」的な罵倒の大合唱が沸き起こったのです。
確かに運転手さんにキレてドアを蹴るその男性はいただけません。でも
よってたかって、実際にバスに乗れている人たちからののしられて当然って
ほど酷かったとは思えないし、運転手さんに肩入れする振りしてストレスを
乗れなかったその人にぶつけてるとしか思えなくて、吐き気がしました。
もちろん「ザーマス」は嬉しそうに罵倒に加わっていました(苦笑)。

また、ある停留所では、ひとり降りたので、ひとりだけ乗れるという状況。
バス亭には30~40代の男性と、20代の女性がふたり、待ってました。
なんとか詰めてふたりとも…とか私は思ったんだけど、「ザーマス」は
「あのひとたちは次のバスでいいじゃない」(※注⇒この日はダイヤなんて
関係ない感じで、30分とか1時間に1本来るかどうか、な感じだった)と
つぶやいてるし、やはりふたりは無理みたい。運転手さんが「大変申し訳
ないのですがおひとりだけ…」と声をかけると、男性が「どうぞ」と腕で
女性に譲るしぐさをして、自分は颯爽と歩き出したのです。もう時間も
20時過ぎてたし、バスがこの先来るあてもないしってことだったんだろうけど
その清清しい一連の動きに、すごいなー。なんて優しいんだ!と思った
んだけど、さきほど乗ろうとした人を罵倒した人たちは、そういう善の人
にはノーリアクション。何これ。おかしいよ。
だって、と私は想像せずにはいられませんでした。

バス停で私がもし待っていて。もうひとり待っている人が老人や妊婦や
子連れの女性だったら、私がその「どうぞ」をするしかない。それは正直
ほんとうにつらい「どうぞ」だ。はっきり言って、礼儀や義理で相当
やせがまんしての「どうぞ」。理性でなんとかバスを譲って歩き出したとき
たぶんちょっと泣くと思う。

そういう状況であの男性は、男性だから、ということでひとりの女性に
対してスマートにためらわずに「どうぞ」と言ったんだな、と思うと
あの人にいいことがありますように、と漠然と思いました。家に帰って
家具が全部無事で家族もペットも元気いっぱい、とかさ。そして逆に
ザーマスには限りなく殺意に近い気持ちが…ほんと、停留所で停まるたびに
蹴りだしてやりたかった。そのかわり、あの優しい男性が乗ればいい。

このバス、大塚経由池袋行きだったのですが、大塚からさらに1時間以上
かかるという運転手さん情報で(ちなみに大塚と池袋、普段だったら
山手線で一駅、たぶん2分くらいで着いちゃう。てことは歩ける距離)
大塚駅で大量に人が降りました。ザーマスも! もう大丈夫です。
実はかなりさっきからトイレに行きたいんだけど、それさえ耐えれば
池袋までは快適な旅ができる、と心底嬉しかったです。
更に、21時半頃に池袋のサンシャインが見えるバス停で「ここまで
来たら歩いたほうが早い」と大量にお客さんが降りていきました。しかし
私は「池袋でタクシーを拾えなかったら歩くわけだから、ここは脚力を
温存しておかねば」と、私はがらあきになったバスに座りました。
なんと、空いて初めて気づいたのですが、うしろの女性グループの中に
和服の女性もいました。…ほんとしんどかっただろうな。しかも崩れて
なくてしゃんとしてて、なんか清清しい気分になりました。

で、22時、池袋駅前到着。
「着きましたよ」と運転手さんが言うと、お客さんはみな拍手。ほんとに
池袋まで連れてきてくれた。ありがたかったです。遠足の最後みたいに、
ひとりひとりが運転手さんに「ありがとうございます」とお礼を言って
おりていきます。小銭が無い人には「今度、都バスに乗るときに倍払って
くれればいいですよ」と笑顔で告げています。運転手さんすばらしい!

というわけで、会社を16時過ぎに出て、22時に池袋。
もう今日中には帰れる。と思ったら、足取りが軽くなりました。

どこかのコンビニか駅でトイレを借りて、タクシーに乗ろう。そしたら
待ち時間入れても1時間くらい?

携帯の充電器も買わなくちゃ。

しかし、タクシーとか充電器とかのんきなことを言っていた私はまだまだ
危機感が薄かったのかもしれません。残業帰りみたいなテンションでした。

※日々、品薄なお店でもちゃんと並ぶし電車を制限されてもちゃんと並ぶ
日本人ってすばらしい、と報道されてますが、実際はやはり、ザーマス
みたいな人や、買出しでエゴのフル稼働してる人が普通にいるのもまた事実です。
そういう人たちをやってること以上に悪く言うつもりはありませんが、すべての
日本人が美しく賢く譲り合ってる、みたいな報道は、励みにはなると思うけど
実際に嫌な人にあったとき、ものすごく運が悪かったみたいな複雑な気持ちに
なるし…まあ、実際こんな災害がなければ、ザーマスだって強引に乗ってこようと
した男性を罵倒したほかの人たちだってまじめで働き者で優しい人なのかも
しれないけど、なんか、本質出るなーって。逆に自分は、ほんとは冷酷で他人に
対しては無関心な人間であるということをわかってるからこそ、無難に感じよく
いようと努力をして、あの地震の日から自分を保ってる気がします。
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by tohko_h | 2011-03-18 06:10 | drops of my days