3月11日(金曜日)その4 池袋から我が家まで

池袋駅から歩いて帰宅したことは2度ほどある。飲み過ぎて食べ過ぎて「ダイエット!」
と調子に乗って天気がよかった夜に歩いたり、した。また、早起きしたテンションで
自宅から池袋まで歩いて買い物に行ったこともある。5キロないからね、1時間もあれば
そりゃ歩けるだろう、というわけである。

しかもバスに乗ってたわけで、歩いてたわけでもないからさほど疲れてない自信はあった。
3時間以上バスの中で立ってたけど、そんなの、KinKiKidsのコンサートのときだって
それくらい立ちっぱなしでワーキャー言ってる。

しかし、意外と、私、疲れていたみたい…
※注→この先、緊張感のない帰宅記録になります。この夜本当に辛い帰宅をされた方が
読んだらふざけるな!って感じだと思います。ごめんなさい。

まずは、とにかく、行きたかった行きたかった行きたかったトイレ~。
池袋駅でトイレに行くなんて、簡単だろう、と思った。が、電車がストップしている
ためか、改札は閉鎖され、トイレはスゴイ行列(ジャニーズのコンサートにおける
トイレ行列を見慣れている私でもびっくりの長さ)。こ、これは待っているのつらい。

ちなみに駅には、電車の再開を待つために、そこかしこに、たくさんの人が座り込み
携帯を手にしたり、本を読んだりしている。普段だったらホームレスの人以外は
座らないような場所だ。でも池袋駅って通路多いし地下が広いから、寒さはとりあえず
避けられることを知った。だてにJRとメトロと私鉄2路線通してるわけじゃない。
大きな駅でよかった。モンハンを地べたに座ってやってる男子グループもいた。
沢山の服の袋を抱えた買い物帰りっぽい女の子たちもいる。

というわけで、とりあえず、西口から街に出る。東武百貨店もルミネも閉まってる。
私はロマンス通り(飲み屋街)へ向かった。ぽつりぽつりとコンビニが何軒か
あるから。そこで、充電器コーナーを見て空っぽなことを確認し、3軒目くらいで
トイレ待ちの人もいなそうだったセブンイレブンに入ってお手洗いを借りた。

この時点で携帯の充電度の表示が赤になってる。ヤバい。トイレを無事にすませると
今度はひたすら携帯が不安。で、コンビニのあかりをたよりにどんどん駅を背に
西口のメインストリートをぐんぐん歩いて、コンビニの梯子をしても、どこにもない。
しかし店員さんが普通に肉まんを蒸したり「飲み物あったまってなくてすみません」
とお客さんと話をしている姿にホッとする。明るくていつもどおりで、電車が東京中で
ストップしたなんて嘘かも、と一瞬希望を持ちそうになってしまいそうなほどの
「いつもどおり」がありがたかった。

コンビニ以外で、どこか充電させてくれるところはないかしら。
バスの中でツイッターやグーグルで(スマホじゃないけど)情報を
拾ったりしてたので、充電した分は思いきり消費しちゃってる。
平日昼間なら、docomoショップは無料充電できるんだろうけど。
なんとなくだけど漫画とかインターネットを備えてる喫茶だったらあるかも。
と思ったけど、その手のお店は全て閉店。一時話題になっていた、ネットカフェで
住んでるとか言ってる人たちは大丈夫なのかな。もしかしてホテルのロビー
なんかがサービスで置いてないかな。と、そのへんのビジネスホテルに入って
みるけど、空いている部屋を求めている人たちの怒号とおろおろするフロントの人、
みたいな凄い雰囲気で「充電器ありますか?」なんて暢気なことが聞けない。
夫婦(たぶん)そろってフロントの人に詰め寄ってる人もいる。だったら、
ラブホテルでも行ってみればいいのに…と、自分がひとりなものだからちょっと思った。

ただし、ホテルのロビーの公衆電話は空いていた。

公衆電話は今、無料で使えるようになっている
携帯同士の通話より、家の電話のほうがなんとかなるらしい

というわけで、一応自宅の留守電に「無事です」と吹きこんでみる。
更に実家に電話をする。妹から、私も無事は無事だよ、と連絡をしてくれていた
らしくて、心配はされてなかったが「今から歩いて帰る」というと心配された。
だって、ここまで歩いて来ても、空車のタクシーなんて1台も見えなかったし
カクゴするしかなかったんだもの。

しかし、ホテルで公衆電話を借りて連絡を終えて、店の外に出て、気づいたことが
ある。

私は、とても、空腹だ。

会社でおひるごはん食べたけど、でも、お腹が減っている。

帰宅すれば食べるものはいっぱいあるし、手元には、さしいれしそびれたパイ菓子とか
いなりずしも入ってる。朝買って会社の冷蔵庫から持って歩いている干物も(ちなみに
厳重な包装でにおわなかった。よかった)でも、このへんで立ち食いするのもなんだし…

と、ふらふら歩いていると、池袋西口側の飲食店は、平和に開け続けていてくれる
ところが多い。立ち飲み屋もあるし、カレー屋もワインバーもあかりがついていて
お客さんが見える。通常営業だ。金曜日の夜の飲み屋さんにしてはさびしげだけど
でもあいてる!

「ホルモン」「七輪」「炭火」の文字が見えた。
肉…肉と、少しのお米。そして乾いた喉にビール。一応女性のはしくれなのですが
ひとりホルモンってアリ? でも、今日は「アリ?いや、ほんとは無しだろう」って
ことばっかりだったんだもん。どうせそんなに混んでないだろうし入ろう。と、
なんと、齢37にして初ひとりホルモン焼きに挑戦。

しかし、広いお店(60席くらいある)は混んでいました。空席はひとつふたつほど。
ひとり客はいなかったけど、席と席のパーテーションが高めな窓際の席に
案内してもらえたので、一息つきました。

「ホルモンと、レバーと、ハラミと、ライス小と…サンチュセットと…

ビール、と言いかけて、ハッとしました。これから5キロ弱歩いて帰るのに
トイレが近くなる飲み物として有名なビールを飲むのは、危険。

でも、エンジン的に少しアルコールを入れたい。というわけで、普段は飲まない
シソ焼酎のロックにしました。

七輪で肉を焼き、サンチュでご飯と一緒に巻いて食べる。時々焼酎。
ひとりでこれを繰り返していると、なんだか変な気持ちです。金曜日の夜に
残業が終わったあとにご飯を食べることはあるけど、全然気持ちが違う。
普段は開放感とともに「これで休める!」って思うんだけど、今回は
※このあと夜道を歩く
※家の惨状確認と片づけ
というミッションが残ってるので、緊張感が抜けきれない。
それでも淡々と食べて、店を出ました。

あとは、ひたすら、歩くだけ。普段、池袋からタクシーに乗るときの道のり
なので、距離感とか建物の配置とかわかってるので、不安はありません。
知らない道5キロと、知ってる道5キロって、全然違うと思う(そういう意味で
初めて歩く道を地図を手に帰宅されたあの夜の首都圏のみなさんには心から
お疲れ様でした、と言いたいです。私は帰宅難民に自分をカウントできません。
バス苦労人のひとり、くらいでしょうね、せいぜい)。

コンビニが割と頻繁に現れるので、そのたびに未練がましく携帯の充電器
売り場を見るんだけどからっぽ(auのだけ1個残ってた、みたいなところは
ありましたがdocomo全滅)。あたりにも歩いている人がいっぱい。そして
コンビニでは地図を店員さんに見せてもらい、道を聞いている人たちが。

(ここの道なら大体わかるから私に聞いてくれてもいいのに…)と、通常時、
人に道を訊かれることがとても嫌なのに、私は思いました。たぶん、切実に
困ってる人を見ると人として何かできることはあるかな?って本能、私にも
多少だけどあるんだな。

最寄り駅よりひとつ手前の駅で、中年の管理職っぽい男性に道を訊かれた
ときは、なんかホッとして教えました。お気をつけて、と自然に言ってました。

実は地震の日から癖になっちゃってるんですよね「お気をつけて」が。
印刷所の営業さんや先に帰る同僚にも言ってる。それって気をつけないと
危ない状況が続いてるから怖い、っていう変な危機感から出てるのかな。

余談おしまい。


会社の同僚同士みたいな若い男子同士が「このへん住んでたんだー」
とか言いあって歩いているところも見た。きっと都内に住んでる方の人が
もっと遠くから来てる人を泊めてあげるんだろう。コンビニで食品を買ってた。

残業をこれからするためか、制服姿の女性社員と男性のグループが
お茶をたくさん買ってるのも見た。お疲れ様です。


普段は、駅から徒歩10分の我が家を「最寄の鉄道駅から遠くて不便。
こんな駅、最寄駅じゃないじゃん!」と不満を言っていたのだけど、45分
歩いてその駅に着いた時は、心から安堵しました。コンビニもまだ
あいてる。寄って、チョコレートとかにかまを買って、普段の会社帰りの
道を歩く。嬉しい。いつもの道だ。確実にうちにつながってる。うちに帰れば
パソコンに携帯をつないで電話もできる。

マンションの玄関についた。あと少しで我が家。
自分が無事に帰れた嬉しさと、家がどれだけ無事じゃなくなってるか。
ちょうどプラスの気持ちとマイナスの気持ちが半分ずつ。
で、エレベーターのボタンを押すと

!?

まだ、復旧してませんでした。

よろよろと階段を上ります。12階建てとかの上のほうなので、かなりダメージが。
高校生で痩せてたときには、階段なんて一段飛ばしで何フロアでも走れた。

ダイエットしなくちゃな…(年齢分を差し引いても)、と思いながら部屋のドアを
あけました。

まず恐れているのは、玄関先のワイン。ダンボールに入れて(たった状態で)
2ダースほど積んであります…。しかし、位置はズレてたけど、無事。ん?
おそるおそるろうかを進み、明かりをつけて、一番不安だったキッチン(逆さづりに
おしゃれぶって飾っていたワイングラスが!)への扉をあけると…目の前の
フローリングの床にグラスが、転がっていました。かけらとかは?と思いつつ
そっと持ち上げると、ヒビすらはいっていません。リーデルの業務用って、
そんなに丈夫なの? 私の頭上くらいの高さにいつもグラスつるしてたから
160cm下にたたきつけられて無事なグラスって…すごいよリーデル!

食器棚は引出が半分あいていたけど、中身はそのまま整然と入ったまま。
うすはりグラスも無事でした。よかった! 

次は居間です。
レグザくん(42インチの我が家の液晶テレビ)は、台ごとナナメを向いていましたが、
倒れてはいませんでした。後日、液晶テレビが倒れていた人がいっぱいいたと聞いて
「うちは運がよかったね」とモテ様に言ったところ、ちゃんと台に固定してたみたいです、
すごく強力な両面テープのすごいやつ、みたいなので。なので、テレビは台になんかの
かたちでガッツリくっつけるのは防災面でお勧め。

ノートパソコンや時計など、割れるとヤバいものは無事。
なんと、テーブルの上に積んであった本の山もそのまま崩れていません。

棚から落ちてきたバムセさん(ぬいぐるみ)はふとんの上におっとり座ってて
平和な顔をしています。


が、しかし。
リビングと一続きの和室に目を向けると「う、地震、巨大だった」と思い知らされ
ました。タンスが倒れていたのです。畳に向かってまっすぐ前に倒れたみたいで、
うつぶせになってる感じ。タンス自体は損傷がないことを確かめました。そして
たんすの上にかざってたのが下敷きになってたパンダぬいぐるみを救出。

とりあえず気になってた台所の食器類とリビングのテレビとノートパソコンを
確かめたところで、私は再び玄関先へ。玄関入ると両脇に、洋室が一つずつあり、
それぞれ、モテ様の部屋と私の部屋になってるのです。

まずは、私の部屋。服がドアノブにまでかかっており、雑誌や本が山積み。通販の
箱がちらかってる、汚部屋特集に写真を送ったら採用されてしまいそうなくらい
もともとちらかってます。さらに混乱してるかなーとのぞくと、なんと!
変わってませんでした。隙間と言う隙間にいろいろなものを置いておいただけあって
抜群の安定感に恵まれたようです。地震前と同じくらいの汚れっぷりでした。
ちらかし、ばんざ・・・い!

では、最後にモテ様ルーム。
彼は、部屋にツッパリ本棚をきちんと置いて、蔵書を整理している几帳面な男。
散らかしっ子の私同様、きっちりしたままノーダメージに違いない、とドアを開くと…
我が家最大の被災度でした。スチールの書棚がぶっこわれて倒れ、その棚板は
折れ曲がり、落ちた本が床に豪快に散らばっています…本の海。

携帯を充電して、まずは実家に電話(妹は会社がホテルをすぐにとってくれた
らしく、そこに泊まっていて無事だったらしく安心)。そしてモテ様にもメール。
「うちに帰ったよ。書棚が壊れてタンスが倒れていたけどあとは基本的にほぼ無傷。
テレビやグラス類の割れ物は問題なし。ひとまず良かった方だと思う」とメール。
すると「タクシー拾えそうになったら帰るね。会社の近くで飲んでます」とのこと。
「タクシー厳しいと思うよ、無理しないでね」とメールをしたんだけど…とりあえず
ほっとした私は、顔を洗おうと洗面所へ。

洗面台の周りにおいておいた化粧水や香水のボトルが全部落ちていましたが
これも割れておらず液体が飛び出してもおらず、ひろって元に戻して終わり。

化粧を落として、スウェットに着替えて、思わず冷蔵庫のビールをあけました。
先ほど買ったかにかまをかじっていただきます!あ、会社から持って帰ってきた
いなりずしもあった。と、先ほど焼肉を食べたのにまだ食べる私。ついでに
干物とタルトは冷蔵庫へ。くつろいでいると…余震が…怖い。私はあわてて
軍手とお金とお財布と鍵を入れた「最低限の非常持ち出し袋」を枕元に置き
もう1度さっききていた普通の服に着替えて布団に入りました。またどこかに
逃げなくちゃいけないのかも…余震は何度もくりかえされ、眠れずにいたら
朝6時にモテさんが帰って来ました。彼はタフです。そのあと倒れたたんすを
持ち上げて、なおしてから眠りました。私は眠かったけど余震が怖くて、
なかなか寝付けず、1時間寝ては起きて、の繰り返しでした…

それでもとにかく、うちに家族といて、ふとんで寝ている。
その贅沢さ、これが平凡ということの貴重さを思わずにはいられませんでした。

PCでいろいろなニュースやツイッターを見ながら、やっと寝たのは朝の7時ごろ
だったと思います。

これでまた、いつもどおりの東京の1日が始まると思っていました…
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by tohko_h | 2011-03-18 18:33 | drops of my days