「テンペスト」池上永一

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「テンペスト」 池上永一

沖縄という土地には「海は綺麗そうだなあ」くらいしか印象が無く、
大学時代の沖縄出身の同級生がたまたま凄くいやな人だったこともあり
行ってみたいとか素敵そうだとか、プラスイメージがあまり持てませんでした。
暑いところ苦手だし(東京も、その点では、何年住んでも、つらい…)。

なので、19世紀の琉球王朝を舞台にしたこの小説が話題になっていたときも
あまり読みたいとは思っていなかったのです。だけど。
「なんか長編でうわーってスケールが大きそうな本を読みたいな」って
気分に、校了があけてホッとしたときに本屋をうろうろしてたら、たまたま
文庫版が並んでました。帯などを見ると、どうやらNHK(BS)でのドラマ化に
あわせた文庫化らしい。まあ、つまらなかったら止めよう、と思いつつ
テーブルに積んで読み始めました。

物語は、真鶴(まづる)という賢い美少女の誕生から始まります。当時の琉球では
女性には学問は不要とされていました。しかし政府の役人になるとても難しい試験・
科試を受けたいと真鶴は願い、孫寧温(そん・ねいおん)という男名前を名乗り
髪を切り、試験を受け見事合格します。役人として宮廷生活を始めた寧温を
温かく見守る同期の朝薫(ちょうくん)のような存在もいましたが、若くして
出世していく寧温をねたむものも多く、その役人としての暮らしは困難だらけ。
しかも、心の中にはまだ女の部分が残っていて、薩摩の役人に恋をしてしまいます。
当時、琉球は日本の窓口として薩摩と接しており、同時に清国とは冊封関係(清国の
臣下の国としてその大使を手厚くもてなし、さまざまな要求に応じる間柄)を
続けているという微妙な立場にありました…

つまりこれ、琉球末期の話であると同時に、清王朝もかなり終わりに近づきつつある
時代の話なんですよね。そう、浅田次郎の名作「蒼穹の昴」で描かれたあの時代。

とても難しい公務員試験(清だと科挙、琉球だと科試)、若く美しい主人公の
宮廷生活、古い国の価値観と近代化のぶつかり合い、など、描かれているテーマが
いくつか重なっています。紫禁城と同じくらい、首里城も神秘的な(宗教的な
役割を負うものがいるあたりも一緒だし)魅惑の宮殿って感じで読んでいて
ドキドキしたし、主人公が性別を偽っていることがばれるんじゃないかという
緊張感もあったし(諸事情あって、男になったり女になったり忙しそうなんです)
面白かったです。ドラマもかなり期待できそう。

ただ、ネットなどでも言われてますが「なぜ時代小説をトレンディすぎる
文体で書いたのか?」という疑問はかなり残ります。ある美人キャラが
「私、泣いちゃう」とすねたり…カジュアルで読みやすかったんだけど、もっと
重厚に「大河ロマンですよ~」って感じでもよかった気がします、どっしりと。

ああでも、宮廷ロマンを口語体でカジュアルに、というと、氷室冴子の
「なんて素敵にジャパネスク」とか「ざ・ちぇんじ(とりかへばや、の氷室版)」
なんかもそうでしたね。平安王朝を舞台に「あたし、瑠璃。姫なんて
不便よねー」みたいな調子で、でもものすごく面白く展開するストーリー。
そっか、これ「なんて素敵に首里ネスク」だと思えばいいんだ。というわけで
内容は「蒼穹の昴」っぽくて、文体はライトノベル調。このアンバランスさに
振り回されつつも最後まで読めました。同じ作家の別の作品(「テンペスト」の
時代の庶民を描いたシリーズもあるらしい)も読んでみようと思ってます。

ちなみに美女でありながら男装するとまた別の色気がある…という主人公を
舞台で演じ、今回のドラマでも演じるのは仲間由紀恵。その主人公をいたぶる
清の宦官(ものすごく変態なのに役人としては優秀)がガクトらしいです。
仲間さんって私から見ると凄く女っぽい女優さんなんだけど、男装似合うかなー。
琉球舞踊おどるシーンとかもあるかなー。なんか書いてるとだんだん
見たくなってきました、ドラマ。

ドラマ…あ、そろそろ7月の新ドラマが始まる…そっちもチェックしないと…。
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by tohko_h | 2011-07-02 23:07 | reading