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「時を刻む砂の最後のひとつぶ」小手鞠るい

「時を刻む砂の最後のひとつぶ」小手鞠るい
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読んだあとに「うう、後味悪かった」とか
「余韻はあるけどなんかスッキリした」とか
最後のページまで読み終えた時に抱く
ざっくりとした印象って、どの本にもある。
もちろん、読む人によってそれは違う。
この本って後味悪い系かな、どちらかと
いえば。でも、不思議な清涼感も感じてる。
薬っぽいハーブティーだけど最後の
ミントの香りで美味しかった気がした、
みたいな矛盾をはらんだ印象。



かつて、辻仁成が「サヨナライツカ」の中で、こんな風に書いていた。
「人間は死ぬとき、愛されたことを思い出すヒトと
愛したことを思い出すヒトにわかれる」

しかし、この小説に出てくる人たちは、死ぬときも、「思い出す」ではなく、
リアルタイムで「愛してる」と思いながら死んでいきそうなタイプばかりだ。
逆に言うと、死ぬ以外に解放されようがないほど、どっぷり恋愛の渦の中に
はまりこんでしまった人たちばかりが出てくる、そんな連作短編集。

あるライターの女性が知った、弟が姉を犯したという事件の意外な真相。

売れない小説家の女→小説家希望のなにものにもなってない若者→
全てに満たされている女編集者、の三角関係。

恋愛が理由で塀の中で暮らすことになった女性と、彼女に手紙を送る
女の交流。

口のきけない少女が出会った憧れの小説家と、その妻。

ものを書く女性の恋愛が多いのが特徴。

毎日、こういう小説を読みたいなーとは思わないのですが(結構ヘビーなので)
読書の秋、濃い恋愛小説を読みたい、という気分にはフィットすると思います。
破滅的で刹那的で、よくも悪くもしつこい恋人たちがいっぱい出てくるザ・恋愛な1冊。
by tohko_h | 2011-10-12 16:43 | reading