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「女ともだち」「深く深く、砂に埋めて」真梨幸子

自分でも理由はよく分からないんだけど、普段は「後味が良い小説が好き!」
「読み終わって頭上に何かがパーッと広がるようなお話が好き」なはずなのに
時々、どろどろのぐっちゃぐちゃの、人間って嫌ねー、みたいな本が読みたくなる。
読みたくないはずなのに読んでしまう桐野夏生は別格として、最近だと
大藪賞を先日受賞された沼田まほかるさんなんかもそうだし、多分この
真梨幸子さんも、そういう「どろどろ小説」の代表的作家のひとりに数えられている
のであろう。書店のポップなどでも、とにかく怖い、気持ち悪い、酷い話、
救いはないです、みたいに、潔いほどネガティブな言葉が並んでいる。で、
なぜか、そういうのにグッと引き寄せられる瞬間があるんだよねー。ってわけで
2冊続けて読んでみました。

「女ともだち」
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郊外のマンションで殺されたふたりの女性。
宅配便の配達員の男性が逮捕され、裁判に
かけられる。しかし、ある女性ライターは、
そのことに疑問を持ち、独自に取材を始めた…
被害者周辺に渦巻く嫉妬や負の感情、狂気を
書いて書いて書きまくり、一番おかしい人は誰?
みたいな感じの、ややホラー風味な一編。


「深く、深く、砂に埋めて」
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生まれた瞬間から美しかった有利子。彼女を
愛したことにより、平凡なサラリーマンも、
意志薄弱気味な弁護士も、人生の階段を
踏み外して落ちていく。冒頭の扉ページに
「マノン・レスコー」の一文が引用されて
いることからも、著者は、いわゆるファム・
ファタル物が書きたかったのかなーと思う。

どちらの小説も、一気読みさせる、時には強引なほどのストーリー運びが巧み。

「女ともだち」の中では「同じ会社の中の正社員VS派遣」とか「スターの
追っかけ社会のオキニ(タレントに好かれてる追っかけ)VSオキラ(嫌われてる
おっかけ。嫌われる理由はさまざま)」とか、「同じマンションを高い値段で
買った人VS値崩れしてから買った人」とか、色々なパターンの女同士の対立が
嫌な意味でイキイキと描かれていて、同じ経験が無くても、張り合ったり意識
してしまう同性が身近にいるとしんどいよねーっていうレベルでは共感をしそうに
なってしまう。

「深く深く、砂に埋めて」のほうは、結構ロマンティックな結末。異常に人を
ひきつけるレベルの半端ない美女のヒロインが、芸能界だと綺麗過ぎてあまり
大成できず、パーティーに顔を出して金持ちをひっかけるような人生を選ぶ、
というところには、美女じゃない私が読んでもなるほどーというリアルな感じ(笑)。
ただ、頭を使って男をおとす、みたいな話じゃないので(男が勝手にハマる)、
「白夜行」のヒロイン的な怖さは無かった。

そして、ドロ読み欲(ドロドロの話が読みたいという欲望。今命名してみた)を
満たすには、ちょっとどちらも物足りなかったです。フィクションフィクション
してて(ひとつひとつのエピソードは生々しく描写されてるんだけどやはり
お話の展開が少し雑だからかなぁ)、作家が頭の中で作った「おはなし」だなって
安心して読めちゃうからかもしれない。
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by tohko_h | 2012-03-18 23:27 | reading