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「ナミヤ雑貨店の奇蹟」東野圭吾

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「ナミヤ雑貨店の奇蹟」 東野圭吾
浪矢さんが営む「ナミヤ雑貨店」。
夜の間にシャッターの郵便入れに相談の手紙を
投げ入れておけば、翌朝には店の裏の牛乳箱に
返事が置いてある。という、プチ文通のような形で、
店主が多くの人たちの悩みに答えてきた。しかし
ある夜、なぜか時空が捻じれ始めて、様々な
時代の悩める人々の間を手紙が行きかう…


東野圭吾モノで「時空を越えて云々」というと、若い日の父に、過去にトリップした
息子が出会う、という「トキオ」という作品があります。

単刀直入に言うと、私の中では「東野ワースト」で、手元に本も置いていないほど
好きになれなかった1冊です。映像化もされてるし人気のある方に含まれる作品
なんですけどね。個人的に過去の世界にいた主人公の父親の荒くれっぷりに
好感が持てず…というわけで「東野さんで時空超えかー、んー」と、手に取るまでは
あまりノリノリではなかったんですね、正直。
しかも、もともと、ファンタジックなお話って、そんなに好んで読まない方だし。

ポスト・手紙・時空を越えてっていうと、観たことないんだけど、「イルマーレ」って
いう映画もあったなぁなんて思いながら、発売日に手にとって何もあまり考えずに
読み始めました…
※ちなみに、いつも村上春樹や東野圭吾の新刊が出ると、タワー状に積み重ねて
売ってる三省堂本店ですが・・・(これはガリレオ文庫のとき)
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今回は、村上春樹の1Q84(文庫版)も発売日が確か一緒とかで、どっちを
タワーにするんだろう、と見に行ったら、村上春樹のほうでした。
こちらは、普通に平積みでした。

しかしこの「あんまり楽しみにしてなかった」ということにより、むしろ興奮と感動が
より深く激しく「ナミヤ雑貨店~」を読む私に襲い掛かりました。
結果、私にとっては前田敦子の卒業並のサプライズになってしまいました。

それぞれの章に出てくる人たちがパズルのピースで、最後に1枚の大きな絵に
なり、その中心にナミヤ雑貨店と店主の笑顔、みたいな物語の構造がすごく好き。

「麒麟の翼」にしても「トキオ」にしても、ある意味「流星の絆」でも、東野さんが
描く父子関係っていつもビターで切ないんだけど、今回は、ちょっとスイート。
ナミヤ父子の会話とか、とてもよかった。


「あしながおじさん」的に、全編が手紙っていうわけじゃないので、これを「手紙文学」と
呼ぶべきかどうか悩みますが、1通の手紙で誰かの人生が開けて行くという奇蹟を
描いた物語として、素晴らしいと思います。言葉の力を信じている人、信じたい人には
必読の1冊です。

売れっ子になりすぎると「飽きられる」という宿命にさらされる厳しいエンタメの世界ですが
東野さんの引き出しはまだまだいっぱいあるみたいで、次はどれを開いて書くのか、
とっても楽しみになりました。
by tohko_h | 2012-03-29 17:27 | reading