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「悪女について」有吉佐和子

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先日、沢尻エリカ主演のドラマを観たんだけど
「すごく長くて人がいっぱい出てくる話を無理に2時間半に
ダイジェストにされても困るよー」という印象だったので、
原作読んでみることに。
富小路公子という女実業家に関わった様々な男や女が、
彼女について語るんだけど、ある人は悪魔のように悪い
女だ、といい、とても可愛くて純粋だったという人もいて
「同じ人の話してるんだよね?この人たち」と混乱が読めば
読むほど深まるという。推理小説じゃないけど、非常に構成が凝っていて、
なんともミステリアスな小説です。
1978年という大昔に書かれた小説であるにも関わらず、古いとか読みにくいという
ことは全くなく、公子を語る人たちのしゃべり言葉も「こういうこという人居そう!」という
ほど自然で、するする読めます。
1章ごとに語り手が変わり、それぞれの章はさほど長くないので「今日は夜遅いから
1章だけ読んで寝よう」とか思って手にするんだけど、気づくと「あと1章だけ読む~」
みたいな状態になって、まる2日で読んでしまいました。

公子は結構嘘をつきます。でも、多分、自分で嘘をつくわけじゃなくて、その場では
その場の真実として語ってるんだと思います。自分のついた嘘を誰よりも信じる女。
多くの男たちが彼女が一番惚れてたのは俺だと信じたのも、逢ってるときは目の前の男に
本気で集中していたからじゃないかと。

ルックスの印象さえまちまちです。色が白いというのは会った人みんなが証言しますが、
ひと目でおお!って思うくらい綺麗だったという人も言えば、美人じゃなかったという人も
いますし、とにかく男好きするタイプだったという人もいました。そのまちまちな感じ、
輪郭の不安定さが公子の魅力だったんでしょう。

色が白くてとりあえずくびれとバストはそれなりにあったっぽい公子とは全然外見は
ちがいますが、ある意味、先日捕まった木嶋香苗容疑者も、そういう「自分のついた
嘘を誰よりも当人が一番信じてるのですごい力を発揮する人物」だったんじゃないかな、
なんて思っちゃいました。

そういう意味で、嘘が苦手科目な女優・沢尻エリカには結構合ってない役かなーって気も
するんだけど、清楚な顔とふてぶてしい顔が矛盾なく同居してるあの存在感は、
わりに似合ってる気が小説を読んだあとではしました。

昨今一番部数が出てる悪女小説って、たぶん、東野圭吾の「白夜行」だと思うんだけど、
あのヒロインの切なさ脆さと比べると、公子は、女性作家がノリノリで(すごい勢いが
ある筆致です)書いただけあって、どこかしたたかで、人間としての滑稽味もあります。
ロマンチックじゃない、でも気になるタイプの悪女・公子の人生を1冊分読んだあとは、
自分も証言者たちのひとりになりきって「私はこう思うなー」と、ちょっと語りたくなっちゃう、
そんな小説でした。
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by tohko_h | 2012-05-15 15:22 | reading