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「寂聴源氏塾」 瀬戸内寂聴

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「寂聴源氏塾」
瀬戸内寂聴

突然ですが。
光源氏が都に建てた豪邸・
六条院って、どれくらいの広さが
あったかご存知ですか?

正解は、なんと・・・

東京ドーム4個分…だそうです。

すごいですよね、京の都の中心部に東京ドーム4個分って!
そこに、春、夏、秋、冬の街をあつらえて、プチ御所みたいにして
住みなしていて・・・本妻から、1度ちぎっただけの部下の奥さんまで
きちんと引きとって養っていたそうです。
なんてすごい財力と経済力、と、勢(精でも可)力・・・
(だけど、源氏って、橋下弁護士より子どもの数少ないんだよね(笑)。
奥さんの数は数倍だけど、子ども3人・・・ちなみに源氏の息子は
本妻とセカンドあわせて14人くらい子どもを作ります。これは
おそらく当時でも子沢山だったのでは)。

こういうワイドショー的視点で源氏物語を小気味よく解説してくれる
面白エッセイ。「あさきゆめみし」(大和和紀)でしか源氏物語を
読んで無いんだけど、くらいの知識があれば十分楽しめます
(私がそうだったから)。

これまでは、恋愛だらけの前半部に比べて、女性たちがどんどん
出家していったり仏教の法会を主要人物が営んだりする後半は
「うーん、宗教色強いなあ」と俗な私には興味がもてなかったのですが
仏門に入りながらも男と女のことを語らせたら当代一流の瀬戸内さんが
出家によって源氏との恋愛に区切りをつけた女性のことをよく理解して
解説してくれ、更に「源氏に一番愛されていたはずの紫の上は、出家を
望みながら最後まで遂げられなかった不幸な女性だったとも言える」という
解釈は新鮮ながらなんだかとってもすとんと納得がいきました。

また、作家・瀬戸内寂聴として、はるか昔の偉大なる同業者・
紫式部についてもあれこれ推理しているところも面白いです。
例えば、たくさんの女君の出家シーンが出てくる源氏物語ですが
後半の「宇治十帖」のヒロインの浮舟という女性の出家の場面だけ
描写がやたら細かいのはなぜか。それは、前半部分を書いていた
ころは宮廷にいた紫式部は、実際に宇治、あるいはそれに類する
寂しい土地で自分も出家して、写経なんかしてるうちに続きを
思いついて書き始めたんじゃないか、と瀬戸内さんは推測します。
そのブランクがあるために、宇治十帖の出だしは文章がいまいち
さえてない(実際に、その落差ゆえに、ここからは別の作者が
書いたという説もあるほどです)んだ、と、ぐいぐい押し進められる
説得力のある瀬戸内説に「なるほどー」とにやりとしてしまいました。
あと、宇治十帖のほうが、エッチなシーンも生々しくなってるとか
(宮廷のサロンで帝と后と女房たちの前で読まれていた前半部は
やはり抑制してたからでは?とこれについては推理されてました)
1000年以上昔のことを想像できる作家が何人いるんだろう。
コレ読んだあとだと、昼ドラにするしかないんじゃない?とまで
身近で濃厚な人間ドラマに「源氏物語」が思えてきます。

というわけで、国文学マニアじゃないけど、源氏物語のプチうんちくに
興味がある人にはお勧めです! 読んだ後におばかさんな私も
賢くなった気がしました(笑)。瀬戸内訳の「源氏物語」にそのうち手を
出しちゃうかもです←ほら、早速調子に乗ってる(笑))。
by tohko_h | 2007-03-29 13:43 | reading