「月島慕情」 浅田次郎

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「月島慕情」 浅田次郎
浅田次郎の新刊。
短編集だし、タイトルがちょっと
演歌っぽいし、文庫まで待っても
いいかなーと思ったのですが
その前に、あまりにもつまらない本を
読んでいて腹立ち紛れと口直しに
購入しました。
表題作の「月島慕情」は、30歳を過ぎた
吉原の太夫が、大好きなお客に身請け
してもらい結婚できることになって最高の
幸せに酔いしれるが、彼の住む月島に
行って、ある真実を知る…という話。
前半部分の「吉原を出て普通の女性になれるんだ!」と張り切る部分と
月島に彼女が出かけてからの描写、どちらも生き生きしていて…
最近、あまりにも安い「泣ける本」が多いので簡単に「泣きました」と
書くのはイヤなんですが、泣かされました。

「供物」は、別れた夫が死んで線香をあげに行く女の話。再婚で幸せを
掴んでいるので、過去のことはいとわしいと思っているが・・・

「雪鰻」は、戦時中に軍隊で生き残った伝説的な人物の昔語りの物語。
戦時中に鰻とヱビスビールというすごいご馳走を特別に支給された主人公が
思い出した戦線での光景とは・・・

「インセクト」は、学生運動が盛んだった頃の大学生が主人公。隣の家に
住む美しい女性とその娘、わけありな男と必要以上にかかわるようになった彼が
だんだん巻き込まれていく様子が描かれる。

「冬の星座」は、あるお葬式の話。40代の医学部の助教授の女性が、
祖母の通夜に教え子の若い青年(解剖ができずに悩んでる医学生)を伴い
出席。そこにやってくるさまざまな弔問客に驚かされたり泣かされたり。

「めぐりあい」は、盲目の女性の恋と別れを描いた話。マッサージの仕事で
揉んでいるお客が、かつて愛したあの男ではないか、と思うのだが、顔が
見られないので確かめるすべは無く、でも次第に確信に変わっていくが…

「シューシャインボーイ」
銀行を辞めて、成り上がりのワンマン社長の運転手になった主人公。社長が
愛馬に「シューシャインボーイ」と名前をつけたり、新宿のガード下で靴を
磨くことにこだわったりするのには、ある「秘密」があった。

全体的にとても完成度が高い本です。浅田次郎さんを読んだことが無い人に
個人的には「蒼穹の昴」か「プリズンホテル」をお薦めしたいけど、どちらも
文庫本で4冊もある大長編。とりあえず短編で何か、ということで、この本を
薦めてみるのもいいかな、と思いました。幸薄い女性が出てくる話って
特に男性作家が書くとやたらと感傷的になってウザいなーと思うことも多いんですが
浅田さんが描くそういう女性は、その不幸を人のせいにしないで引き受けて
なんとかやりくりして生きていこう、という心構えが素敵なので、魅力的。
そして、最後のモノローグの美しさとか手紙の効果的な使い方とか
そのへんはあざとさギリギリのところで相変わらず名人の浅田さんです。
読めてよかった!
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by tohko_h | 2007-03-31 09:45 | reading