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「スワンソング」大崎善生

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「スワンソング」
大崎善生
編集者の僕は、同僚の由香と
つきあっていたが、アルバイトの
由布子と心が通じてしまう。
荒れる由香と、怯える由布子。
ひとつの恋の終わりと、新しい
恋の始まりに消耗していく3人。


恋愛小説っていうのは、どこか「こんな風に人を好きになりたい」
「こんな風に好かれたい」という憧れの要素があったほうが
読んでいてハマれるもの。「セカチュー」みたいな恋人死にモノの
恋愛ものが出続けるのも「死んでも愛され続けるってちょっと
いいかも」とか「死んでも忘れないほど人を好きになるってステキ」と
そういう憧れをくすぐるからだろう。そういう意味でこの小説は、
恋愛小説としてかなり、厳しい。
男がひとり、女がふたりで、男が心変わりして、といういくらでもある
話なんだけど、振られた女の子は未練タラタラで新しい相手に
嫌がらせをしたりやけくそで会社に来なくなったり酷い荒れ方をするし
彼の心を奪った由布子は、そんな由香を恐れ、やはり壊れていく。
そんなふたりにくたくたになるまで付き合い、やはり投げやりな主人公・・・
まあ「こんなに大変な最悪な事態になっても恋はどうしようもない」という
話だと思えば読めないこともないけど、この後味の悪さはちょっとすごい。

作中、主人公が真夜中のコインランドリーで知り合う通りすがりの少女は
「ブラジル出身の友達に聞いたけど、ポルトガル語で「アルマジェミア」という
ふたごの魂を意味する言葉がある。もともと男女は一対のものだけど
離れ離れになって地上に生まれてくる。その相手が見つかれば、最高の
恋ができるんだって」というベタな話をする。「アルマジェミア」という言葉は
ステキだけど、この手垢のついたたとえが来るか!と思った。

ちなみにおどおど小動物系なのにしっかり略奪成功する由布子は
うれしいことがあると「キャッ」と笑い、男子社員と遊んで雑用をサボるような
恋敵じゃなくても編集部にいて欲しくないヤング金麦系(笑)。
by tohko_h | 2007-09-08 13:08 | reading