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「渋谷に里帰り」山本幸久

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[渋谷に里帰り」
山本幸久
働く女を美化せず、かといって
愚痴っぽくもならずにさらっと
器用に描く山本さんの新刊は
またまた得意のお仕事モノ。
今回は32歳の男性が主人公。
デビュー作「笑う招き猫」では
新人漫才コンビの女の子、
「凸凹デイズ」では
デザイナーのタマゴ、
「男は敵、女はもっと敵」では、映画宣伝会社社員、と
働く女子を活写した筆致は、主人公が男性になってますます
冴えた感じ。今回は、食品会社のどっちかというと無能っぽい
男性営業マンが、地味でぱっとしなくてルーズなのに
営業成績トップの先輩女性から営業担当エリアの渋谷の顧客を
引き継ぐ、という「営業小説」! ところが、主人公は渋谷に行くことを
長い間避けて来たといういきさつがある。かつて渋谷に自宅が
あったのだが、地価高騰で都心を離れて以来、ごぶさたしていたのだ。
渋谷に残っている幼なじみに「裏切られた」と思われたくないし、
あまりいい思い出もないから。

しかし、そんなこと言ってられない! とんでもないやり手の先輩に
引きずられるように、渋谷に“里帰り”せざるをえなくなるのだった…

営業先のクセありすぎな取引相手、ひょんなところで再会した
渋谷に住み続けていた幼なじみ、そして会社の同僚、
隣のオフィスの気になる女の子…豪華なテレビドラマみたいに
脇まで抜かりなく個性的なキャラクターが揃っていて、
マンガみたいに面白いことを言ったりやったりする。
だけど、そのぶん全体の印象が散漫かもしれない。

NHKのサイトで連載されていた小説を単行本にまとめたもの
だそうです。面白いんだけど、1冊まとめて読むと、少し物足りない。
氷河期の就職活動で挫折して「ここしか行く会社なかったし」と
やさぐれてる気分とかは、同年代として分かる気がするところも
あったんだけど・・・

というわけで・・・

(自分的プライス)
定価¥ 1,470 (税込) →自分的プライス¥662(45%)

by tohko_h | 2007-10-30 18:41 | reading