トラウマが消える瞬間。

ドラマや映画なんかだと、派手なBGMつきで美男美女が情感たっぷりに
演じる「トラウマが消える瞬間」。恋愛に傷ついた人が次の恋愛で
立ち直ったり、人に傷つけられて臆病になった人が勇気を取り戻したり、
ありがちといえばありがちだけど、どれもこれもドラマティック。

しかし、トラウマという言葉を拡大解釈すると、傷つくのも一瞬、
癒されるのも一瞬なのかも、と思うことがついこの前あった。

傷ついたのは大学4年生の頃。
就職氷河期ということで、今思えば皆殺気だっていたと思う。
内定がある人はレア(コネ無し子の場合はとくに…当時、
自宅・現役・コネありの、「じげこちゃん」じゃないといい所に
お勤めするのは難しいというウワサまであったのですよ)で
皆、これから暑くなるのにまだリクルートスーツ脱げなくて
やだなあ、卒論もあるしなーなんていう時期。教室で休み時間に
何か雑談をしていたときに、中のひとりが私の知らない時事用語を
発したので「その言葉今初めて聞いた。どういう意味?」となんの気
なしに聞いた。
そしたら、その同級生(気の強い…美人じゃないが美人風に作って
いたので迫力があった。余談ですが)は、心底軽蔑した顔と声で
「トウコさん、自分がものを知らないなんて人前でよく言えるね。
アンテナが鈍いことを恥じないなんておかしい」と、言われたんです。
そりゃ、当時の筆記試験必須用語の「住専」(これが一番頻出用語
でした)とかだったら聞いた私の方がバカだけど、結構難しそうな
ことを言っていたわけだし、別にそのときまで和やかにしゃべって
いたのに、いきなりキツいことを言われて私は呆然。しかし、
一瞬で「アンテナ鈍いんじゃない?」なんて言葉が出るなんて、
ある意味この人すごいかもーなんて、衝撃のあまり余計なことまで
考えちゃった。

そのショックで、その日以来、人としゃべってて、知らない言葉が
出ると、ビクビクしつつ知ったかぶりで相槌を打ち、みたいなのが
ずっとずっと続いた。自分にとっては、正直、ものを知らない人間より
知っているフリをする人間のほうが下等なんだけど、また誰かに
何かを尋ねて「アンテナ鈍いバカ」扱いを受けたらまた傷つくし…
という自己防衛本能ゆえに。まあ、インターネットの普及で、
知ったかぶりをその場でして、あとで必死で検索、という裏ワザも
使えるようになったしだいぶ折り合いはついてたつもりだったんだけど。

ついおととい。
夫と家で仕事の話をしていたら、ひとつ、知らない用語が彼の言葉の中に。
つい、身内だし、同業者だから聞いておきたい!と、目の前にパソコンが
あるのに彼に「今の〇〇ってどういう意味? 私聞いたこと無くて」と
無防備に言って、言ってから「バカにされるかなー」と思ったんだけど、
普段からバカだのボケだの言われてるのが普通なのでまあいいか、とか
思ったら、彼は普通に教えてくれて、そのあとで「君はさー、そういうときに
その場でちゃんと訊くのはえらいよね」と言うじゃないですか。
彼が私をほめるなんて年に1度あるかないかなので、びっくりしつつ
「え? 訊くのって、なんか、知りません、教えろって感じでむかついたり
しないの?」(ここまでかたまっていた私の被害妄想)
「いや、普通に素直にわからないんだけど、って言えるのは良いことだよ」と
ダメ押しされました。その瞬間、10年以上前に「アンテナ鈍い」と言われて
ずっとわだかまっていた何かが、すーっととけました。沸かしすぎた紅茶の
砂糖が溶けるみたいな、一瞬のすーっ、でした(笑)。

傷つくのも、癒されるのも、ほんの一瞬なんだな、と思いました。
逆に、今回彼に褒められて、あー私ずっとわだかまってたな、と
気づいて、それと同時に解消できた感じ。なんか不思議な爽快感でした。

まあ、私のアンテナなんてものがあるとしたら、今は大阪方面にまっすぐに
向いてます、たぶん(笑)。
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by tohko_h | 2008-02-05 07:27 | drops of my days