「右岸」辻仁成+「左岸」江國香織

辻仁成と江國香織のコラボ小説第2弾!
前回の「冷静と情熱のあいだ」では、ひとつの恋の顛末を、
辻さんが男の側から、江國さんが女の側から描いたラブストーリーだった。
今回も、ドラマティックな運命を背負った男女の物語ではあるのだけど、
恋愛がメインテーマじゃないような気がする。もっと大きなテーマを描き
たかったのかもしれない。

物語は、福岡の地方都市から始まる。
九は、元気で体が大きな男の子。
一方、茉莉は、うったうったうー、と口ずさみながら踊るのが大好き。
隣の家で育った、いわば幼馴染のふたりが、世界中をさまよい、
何度も離れながらも、また出会ってしまう…お互いの人生の一部として。
そして最後に、やっと会えたね・・・と(笑)。←半分ホント。


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「右岸」
辻仁成
というわけで、こちらは、九が
主人公の物語。隣の家の賢い
長男に憧れ、また愛らしい
茉莉に心惹かれるが、自分の
特殊な能力に気づき、慌しい
青春を送ることになる。
そして、やがて、パリに移り
すむこととなり…


物語の最初の方は、九州が舞台で、父親が心優しき極道の男、
母親が、きりっと筋の通ったかたぎながら落ち着いた女性、という
両親の設定といい、二人が交わっている間に、少年時代の九が
横入りして三人で眠った、というシーンあたりもそうなんだけど、
五木寛之の「青春の門」筑豊編をなんとなく思い出させる。
そして、九が超能力に目覚めてからの話は、精神世界に寄って
いく感じが、最近のよしもとばなな作品に通じてる気がする。
2段組でハードカバーで辻氏の凝った文体の小説を読み続ける、
というのは、なかなか時間がかかりました。


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「左岸」
江國香織
こちらは、大学教授の父と、
ガーデニングを愛する母、
そして知的な兄の元で育った
幸福な少女・茉莉の青春、
そして激動の愛に生きた
日々を描く。江國作品で、
舞台が地方都市って割と
珍しいな、と思った。


奔放に愛する男について身軽に旅立ってしまう茉莉。その身軽さ、
率直さは、彼女を魅力的に見せるが、普通に生きるにはちょっと
厄介だった。好きな男に幻滅しても同棲をずるずる続けちゃうとか、
恋愛メインで生きている茉莉の行動パターンは、なんだかとても
大変そう。しかし、自分に似合う人と結婚もし、子供も持ち、
大人の女性としてしだいにたくましくなってくるのです。

九と茉莉。
ふたりの人生の特徴は、愛した人をたくさん失っていること。
そして、少しずつ現実離れした生き方をしてきたこと。
そんなふたりが、年を重ねて、ふたたび向き合うまでの、長い長いものがたり。

恋愛ではないけど、お互いの人生に食い込んでいるふたりの心は、
1本の川を挟んでいる右岸と左岸のようにいつも隣どうしだったのかも。
みたいな意味なのかな、タイトルは。

辻さんの文章の密度の濃さ(悪く言えばくどさ)は毎度のことだが
江國さんの文体も、今回は、ふだんのふんわりした感じと少し違っていて
かなり綿密な打ち合わせや取材などがあって書かれたのかな、と思った。
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by tohko_h | 2008-10-17 00:21 | reading