「夕映え天使」 浅田次郎

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「夕映え天使」浅田次郎
2008年唯一の短篇集。
と、帯であおられていたので
内容など吟味せずに(結局
読むんだけど文庫待つか
どうか)購入。結果、うーん、
文庫でもよかったかも、
というちょっと残念な感想に
至りました。今から浅田信者の
母に貸すので、また話をして
みようと思います。


「夕映え天使」
寂れた商店街の老いた父と中年の息子のもとに現れた女性・純子。
頼まれるまま住み込みの店員として彼女を雇うが・・・ある日忽然と
彼女が消えてしまう。父は老いが早まり、息子もどんよりとしている。
そんなある日、純子らしき人物の情報が。そして訪れた苦い再会とは?
最後の苦い再会のところは素晴らしい。うますぎて印象がうすい・・・。

「切符」
オリンピック直前の東京。今ほど離婚がポピュラーじゃなかった時代。
父も母も自分を置いていってしまい、父方の祖父のもとに引きとられた少年。
2Fに暮らすわけありな感じの夫婦や同級生の少女との交流と
祖父の心意気を描いた1編。「霞町物語」に出てくる筋のとおった
おじいさんに通じる祖父のキャラが秀逸。明治男の矜持というか。
ラストシーンの美しさもさすが。

「特別な一日」
どんでん返しにびっくり。最初は、平凡なサラリーマンの最後の日、つまり
定年の日の出来事(部下への最後の小言、かつて社内恋愛をした女性との別れ、
行きつけの飲み屋での最後のビール)を淡々と描いた話なのかな、と
読んでいたら、ラスト2割くらいで、まさかこうくるとは!とびっくりの
裏切りプロット。会話部分が味わい深い。最後は読者におまかせ、みたいな
ふんわりとした閉じ方。

「琥珀」
ある寒い街の喫茶店。カウンターの中にいた男は、ずっと捜していたあの…
人捜しと夫婦愛がテーマ。後味の悪さと余韻は、ドラマ「相棒」にたまにある
誰も幸せにならない結末、に通じる雰囲気。

「丘の上の白い家」
まだ日本には貧しい人たちが今よりもっとたくさんいたころ。主人公と
もうひとりの奨学金をもらっていた優等生のクラスメート。丘の上の
白い家の金持ちの娘と出会うことによって、運命が転がりだして…
最後はある人物の手紙で終わるんだけど、読んでいて、その
人を馬鹿にしたわがままさにイラっとした。浅田さんがこのキャラを
愛らしい人物として描いたのかエゴ丸出しのバカとして描いたのか
どっちなんだろう。

「樹海の人」
かつて、自衛隊にいたことのある小説家の主人公が過去を回想。
自衛隊の演習中に樹海で出会った自殺志願者との短いやりとり。
浅田さんが元自衛官だったという経歴と考えあわせると、
これはノンフィクション?と思ってしまうような意味深な感じ。

「切符」がすごくよかったのと「特別な一日」のよくあるんだけど浅田さんが
このパターンで描く?というどんでん返しは印象深かった。1本目の表題作が
ちょっと長く感じたので全体の印象がぼやけたかな。
M-1の演じる順番もそうだけど、短篇集の作品の配置っていうのも
だいぶ本の1冊の印象を変えるな、と思った。最後に「樹海の人」は
鉄板だけど、「切符」スタートで、「特別な一日」が「樹海の人」の手前、
とかが個人的によかったなー。と、巻末の初出を見てみると書かれた
順番とは違うから、単行本の編集者も考えたんだろうけど。

掲載順(小説新潮)だと
「切符」(平成15年5月号)
「夕映え天使」(平成18年1月号)
「樹海の人」(平成19年5月号)
「琥珀」(平成20年1月号)
「特別な一日」(平成20年7月号)
「丘の上の白い家」(平成20年11月号)
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by tohko_h | 2008-12-23 13:59 | reading