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「サムシングブルー」 飛鳥井千砂

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「サムシングブルー」
飛鳥井千砂
4つの「サムシング」を身に
つけて嫁ぐ花嫁は、幸せに
なるといわれている…そんな
おまじない、サムシングフォー。
サムシングオールド(古いもの)
サムシングニュー(新しいもの)
サムシングボロウ(借りたもの)、
そしてサムシングブルー、
青いものを、ひとつ。


そんなロマンティックなタイトルと言い、作家さんの美しいペンネームといい
てっきり甘いラブロマンス的な小説だと思って手にしたらビックリすることだろう。
いきなり28歳ヒロイン・梨香の失恋シーンから物語は始まるんだから。
イラストレーターの恋人が描いた時計の絵(実際の壁掛け時計のとなりに
飾っていた)とか、ちょっとした言葉の行き違いとか、決定打はないけど
ダメになっていく描写がすごくリアル。ドラマに出てくるような派手な恋愛じゃ
なくて、毎日電車に乗って会社に行って時々は友達と飲んだり買い物して、
みたいな普通のどこにでもいるような女性が普通に恋をして失恋したんだな、と
導入部からすっかり感情移入させられてしまう。

そんな梨香のポストに届いた結婚式の招待状。失恋直後っていうタイミングで、
しかも、高校時代大好きだった彼氏と、同じく高校時代の多くの時間を共に
すごした親友の結婚式だというので、更に落ち込みは深くなる…私と別れて
いつから、彼女と??
しかも「皆でお祝いしよう」と、新郎新婦のために、高校時代一緒に
運動会の実行委員をつとめた仲間たちが集結することに…

話はシンプル。
※失恋した女の子が、元彼の結婚式に動揺する。
※昔の仲間と会う機会が増え、高校時代のことをあれこれ思い出す
(回想シーンも丁寧に描かれている。実行委員として一緒に活躍した
仲間たちも結構な人数いるんだけどちゃんと描き分けられていて、
作者の達者ぶりが感じられます。マンガなら6人の男女を描き
分けるのはまあ絵柄でなんとかなるかもだけど、文章でそれって
難しいものです)
※結婚式の日が近づいてくる・・・

そんな日常の心の揺れや小さなエピソードの積み重ねが自然で、
私だってこんなことあったらこういう行動しちゃうに違いない、とか
自分もこんなこと言われたらやっぱりこんな風に落ち込むだろうな、とか、
押し付けがましい話じゃないのに、すごく納得させる力のある小説でした。

読後感も爽やか。恋愛とか仕事とかその他もろもろを普通に頑張る
普通の女性がヒロインでこんなに面白い小説になるんだ!と目から
ウロコ的な(初めてなんとなく読んでみた作家さんだったし)1冊でした。

で、私の一番尊敬している&信頼している書評家さんがこの本に
ついて描いた文章が、こちら。

藤田香織さんのレビュー
by tohko_h | 2009-07-03 14:01 | reading