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「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」 辻村深月

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「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」
辻村深月
かつて読んだことのある、
「太陽の坐る場所」同様、
女性間の格差のある世界を
舞台に、更に、母と娘の
ねじれた関係性も描きこんだ
著者渾身の1冊。先日、
白石一文と佐々木譲が
直木賞を受賞しましたが、
これも候補作のひとつでした。


山梨県で、いわゆる「お年頃」になって、互いのネットワークを
フル稼働して合コンに誘い合わせていたかつての女の子たち。
その中に、みずほと、チエミもいた。
地域の有名企業の経営者一族の娘で、しっかり育てられた
みずほと、過保護なほどの愛情を一身にうけて育ってきた
農家の娘・チエミ。
彼女たちも皆、30歳を過ぎて、大人になった…

現在のみずほは、東京で理解ある夫に恵まれ、ライターとしても
仕事を続けている。そんなある日、チエミが自分の母親を刺殺して
逃亡しているというニュースを聞き、驚いて山梨に戻ることに。
かつての合コン仲間の仕切り屋だった子や一番きれいだった子、
そして、チエミの恩師、高校時代の友達、職場の同僚などに
聞きこみをする。
あれだけ仲良し母子だったチエミ家なのに、なぜ娘が母を刺すという
悲劇が起こってしまったのか…次第に、みずほは、関係者たちの
話を聞いていくうちに、ある真実に気づく…

これ、イヤな話です。
角田光代の「森の中の魚」とかもそうなんだけど、女性が複数集まった
ときの上下関係のできかた、その関係によって、上の人がどう増長し、
下の人がどう卑屈になっていくかというプロセスが丁寧に描いてあって
出てくる人出てくる人「いやな女」なんです(笑)。
東京にいる人は地元の人を見下し。
結婚してる人は不倫してる人を見下し。
お金持ちになった人は貧乏そうな人を見下し。
賢く学歴のある人は、そうじゃない人を見下し。
それを、表に出さないで「お友達」を続けている世界。
なんてグロテスクな!
でも、そういう世界、あったよなーという感じ。

結局、善良でずっと地元を出たことが無くて、地味な容姿のチエミは
誰の中でも「パッとしない子」ということで、後回しにされたり、
低く見られたりしています。しかし、彼女の場合は、溺愛する両親の
存在がありました。送り迎えはもちろん、娘の合コンの詳細まで聞いて
にこにこしている、娘ラブの母親…
こういう「外では粗末にされてるけど家では宝物」みたいな育ち方って
しんどいだろうなーと思ったりもしました。

ちなみに今の私は、そういう、女性が複数集まるところで順位を
つけたり、ある区切りで分けようとしたりはしません。
する気にもならない。

と書くと、なんだかとてもフラットで性格の良い人みたいだけど(笑)、
実を言うと…
そんなことしたら、自分はいつも最下位になっちゃって、どうやって
生きていったらいいかわからなくなるから、という、ちょっと悲しい
理由からのきれいごとだったり、するのです。
と書くと、暗い話になっちゃいますが・・・逆に言うと、自分から見て
参りました、みたいなステキな人と友達になったり一緒にいる
わけだから、それはそれでいいのかー(笑)。でもこういう性質って
にじむから、時々とんでもないくらい舐められてて凹むことも、
あります。永遠のコンプレックスだなー。こういうのって、正直、
就職とか結婚とか、どこかで気持ち良くケリがついて、さよなら
自意識異常な私、みたいに落ち着くと思ったんだけど…相変わらず
私の自意識すごろくは「自分が誰よりもイケてない」という
振り出しに戻ってしまうのでした。

というわけで、シンプルに、面白かった!とか、読んでよかった!と
いう感じの本じゃないんだけど、この後味の悪さはある意味
すごい・・・かも。

ただ、同じ内容を書くにしても、違う文体で読みたかったな、と
思います。なんだか少しもったいつけた感じの奥歯に挟まり系の
文体が、読んでてまどろっこしいのです。せっかく濃くて良い
ストーリーなんだけど、テンポとかキレという意味で、物足りない。
というか、あれでいいの?という感じがしました。テーマをあえて
ぼかし気味に伝えたかったという演出だったのかもしれないけど。
by tohko_h | 2010-01-19 15:16 | reading