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「カッコウの卵は誰のもの」

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「カッコウの卵は誰のもの」
東野圭吾
映像化率NO1作家でもある
東野圭吾さんの最新刊。
アルペンスキーの元日本代表・
緋田は、妻を亡くしてから、
ひとり娘の風美を男手ひとつで
父として、そしてスキーの
先輩として育ててきた。そんな
風美も、もう19歳。ワールド
カップに出られるような選手に
成長しつつあった。


そんな中、彼女の才能に「遺伝子」という点で注目するものも
あらわれた。良いアスリートがもつ遺伝子のパターンに
彼女が当てはまるというのだ。ということは、父の緋田の
DNAにも同じものが含まれていて、それが遺伝したからこそ
風美の才能が花開きつつあるのではないか、調べさせてほしい。
その依頼を緋田はかたくなに拒む。
なぜなら、遺伝子を調べたら、自分と風美の「父娘関係」の
秘密が明るみになってしまうからだ…そこに、風美を脅迫する者が
現れたり、遺伝子だけで選ばれてクロスカントリースキー選手として
エリート教育をうけることを強いられる高校生などがからんで、
物語は二転三転する!

父と娘の絆、というテーマに、遺伝子をめぐるミステリーをからませて
一気に読ませるのは、さすがです。理系な部分もありながら(初期の
作品や「ガリレオ」シリーズなどにその傾向が強い)、人間ドラマとしての
見せ方もしっかりしてて、広い読者がスッキリ読める上質なエンタテイメント。
「さまよう牙」で描かれた、娘のために苦悩する父親、というモチーフを
ウィンタースポーツの世界にからめてエンタテイメント寄りに仕上げた
読み心地の良い1冊。お勧めです!映画になりそうなお話だと思うので
その前にぜひ、みたいな(笑)。

さて、最近、東野圭吾の小説がなんで沢山の人に読まれるのか、私も
好きで読んじゃうのか、自分なりにひとつの結論に至りつつある。
最近の小説って、作者がヘタだからか編集が怠惰なのか、あるいは
そういうのが意味深な感じがして今の読者には受けるようになりつつあるのか、
わからないんだけど「何を言ってるのか分からない」文で書かれてるものが
少なくない。
実際、この前の直木賞候補だった辻村深月の「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」に
ついては、直木賞の審査員も「誰がしゃべってるのか分からないセリフなどが
あり、文章表現に問題がある」と選評を寄せていた(読んだ時に思ってたこと
そのまま審査員が言ってたので、「直木賞の審査員と私の見る目が一致!」と
ちょっといい気になった(笑))。

そういう「誰がどこで何をやってるか」読んでて凄く悩み、何度も(好きで
そうしてるんじゃなくて)読みなおして考えないと場面が浮かばない、みたいな
小説が増えつつあって、読むのに余計なストレスがかかるなーって中で
東野さんの文章は、とても簡潔で、誤読しようがない。ぶれがないし、誰が
何を考えてどう行動してるか、が、いつもシンプルにきちんと読者に
提示されているのである。こういうところもある意味理系っぽいかも。
そういう、前へ前へと読める素直で意味がすっきり通る文体を獲得してる、
というところも、東野さんの強みで魅力だと思う。だからといってそっけなく
なることはなく、濃い人間ドラマも、すごいドンデン返しもしかけられるのだから
やっぱり凄い小説書きだなあ、と思うのです(そして、そういう、読み間違いや
意味の取り方で迷いようがないので、映像業界からの引きが強いのかもしれない)。

さて、そういうわけで、今年初めての東野さんの新刊は、大あたり、でした。
ラスト近くの、父娘のあるシーンで、私、ちょっと涙出ました。

ちなみに、ちょっと前から、読書メーターというものをつけてます。
ブログに書くより、とりあえず「これも読んだ!」とメモ代わりに。
マンガも含めてOKなところが好きです。
私の平均読書量は1日につき、1、5冊らしい。意外と少ない…
by tohko_h | 2010-01-21 11:47 | reading