2011年 11月 02日 ( 1 )

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「やがて目覚めない朝が来る」大島真寿美
今も怖いけれど、子供のときはもっと「自分が
死ぬこと」が怖かった。夜中に電気が消された
暗い部屋で目を凝らして、朝が来て世界が
動き出しても自分だけそのまんま終了している、
そんな「目覚めない朝」がいつか必ず訪れること
を想像しただけで怖くて眠れぬまま朝を待って
いたのを覚えている。


しかし、この小説に出てくる大人の人たちはさらりと「自分が死んでも悲しんだりしないで
ああ死んだなってちょっと思ってくれればいい」とか「おれが死んでも遠くの町からわざわざ
葬式のために帰ってくるな」とか、自分の死に関してとても自然な言葉で話をする。
ドラマや小説やマンガで「何かを盛り上げるための死」ではなく、地に足がついた人生の
最後のしっぽみたいに当たり前にくっついてくるナチュラルな「死」の描き方が、なんだか
読んでいてとても心地よかった。

主人公兼語り手の有加は、両親の離婚後、母とともに、父方の祖母・蕗が住む
洋館に移り住み同居することになる。嫁が姑宅に子供を連れて身を寄せる、という
ちょっと不思議なシチュエーションではある。更に元女優の蕗を慕って、さまざまな
人たちが出入りしている。大人達の合宿所みたいな不思議な家。
その暮らしを回想する有加が10歳の少女から大人の女性になるまでの心の軌跡と
蕗さんをめぐる人々の物語。

老いた蕗さんを前にヒロインは「ほかの年寄りと蕗さんは全然違う」と大声で叫び出したい
衝動に老人ホームで取りつかれるが、次の瞬間「それは蕗さん以外のお年寄りも
みんなそうだ。特別じゃない人なんてひとりもいない」と気づく。そういう当たり前、を
押しつけがましくなくさらっと描いた読んでいてだんだん気持ちよくなってくる佳作。
読み終えると「目覚めない朝まで、ひとつでもふたつでも、好きなこととか人が喜んで
くれることをしたりささやかなものや縁あって出会った人を愛したいな~」と直球で
思える、読者を正直者にしてくれる1冊です。

※10月に読んだ本は10月のブログの過去記事の日付にさかのぼって書きます。
ご興味がある方は「reading」のカテゴリーをクリックしてお手数ですが読んで
ください。
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by tohko_h | 2011-11-02 15:52 | reading