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「セシルのもくろみ」唯川恵

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「セシルのもくろみ」 唯川恵
38歳の専業主婦・奈央は、友達に
誘われ、退屈しのぎと軽い気持ちで
ファッション誌の読者モデルの
オーディションに応募して、合格。
勝気な美人セレブと、おっとりした
医師妻と共に、誌面を飾ることに。
ヘアメイク、カメラマン、編集者など
雑誌を作るために集まってくる
アクの強い人々、モデル同士の
足の引っ張り合い…最初は戸惑い
ばかりの日々だったが、奈央も
負けたくない、自分も輝きたい、という
気持ちが高まってきて…


平凡だったはずの私が…!
友達の付き添いのつもりだったのに…!
こういう典型的昭和少女マンガ風棚ボタサクセスストーリーって、好き。
雑誌「STORY」に連載されていたということで、展開が早く、山場が続き、
飽きずに最後まで読めました。モデルものや芸能ものにお約束の、
口は悪いけど腕はいいオカマのヘアメイクなんかも出てきます(笑)。

しかし、ヘンな話、唯川さんの小説はかなり読んでいると思いますが、
こういう「選ばれた女の話」より「選ばれた女を横目で見つめつつ内心は
嫉妬と「私だって!」と思ってる女の話」のほうが得意な作家さんという
印象があり、実際、最初のうちは、ヒロインのサクセスより、それをねたむ
友人の描写のほうが生き生きしてる?みたいな不安定さもありました。
でも、だんだん、ヒロインが、プロ意識に目覚めて仕事場に向かうようになる
その変化は読んでいて面白かったし説得力もありました。

説得力といえばひとつだけ残念なのが、雑誌掲載ということで具体的な
ブランド名を出したりできなかったんだろうし、いろいろ厳しい大人の事情が
あったのだろうとは思うのですが、作中に出てくる服やバッグの描写の
おしゃれ感がいまひとつ。やはり雑誌に載るコーディネイトやアイテムの
描写は、豪華さやおしゃれさが伝わってこないとリアリティとおもしろさが
減ってしまう気がします。少し勿体なかったかも、そのあたりは。

しかし、こういういかにも林真理子が書きそうな設定のお話を唯川恵で、
というオーダーが入ったのは、モデルたち同様、作家の世界にも世代交代
みたいなことがあるんでしょうか。というのは深読みしすぎかな。
by tohko_h | 2010-02-24 15:02 | reading