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「パレード」吉田修一

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「パレード」 吉田修一
映画絶賛公開中、本も売れに売れている
ようなので、遅ればせながら読んでみることに。
自分の中で当たり外れが激しい作家NO1
(次点は実は東野圭吾かも)の修一ですが・・・
これは、もう、そういう普通に面白いとか
つまらないとかで語れない1冊でした。
解説の川上弘美さんは「こわい」という
言葉でこの小説を語っていましたが、
もしかしたら「気持ち悪い」でもイケるかも。


都内の2LDKのマンションで暮らす4人の男女。
恋愛関係にあるものはいない。
お気楽大学生で恋愛やバイトに励む良介。
マラソンが好きでコーヒーやタバコを憎む健康ラブの直輝。
有名俳優とつきあっており恋愛依存気味の美人・琴美。
リアリストで、オカマと飲み歩く酒乱系おこげ体質の未来。
ご飯を食べに行ったりだらだら話をしたり、良介の恋人や直輝のもと彼女が
遊びに来たり、隣の部屋の人の出入りを気にしたり、ゆったりしたペースで
物語はすすむ。固有名詞(食べ物や映画やテレビ番組のタイトルなど)を
たくさんちりばめているのに、どこかリアリティがない空疎な雰囲気。
そんな4人暮らしに、18歳のサトルという少年がいきなり加わることに。
夜のお仕事をしているクセのある人物…そこからきしみだす生活。
不協和音…そして意外な結末。

皮膚の外側と内側の温度差ってあるよなー、というのがざっくりした感想。
それぞれがお互いに言いたい放題言い合ってるようで、皆に受け入れられやすい
言動を取り合っている。これがオモテ。で、裏というか、皮膚の内側では、
どろどろした感情とか困惑とか恐怖とか苛立ちとかが飽和しつつある…
そんな彼らが、皆いきなり爆発してぶっちゃけ合う展開になるのかな、と
思ってたんですが、意外な着地点にぞっとした。
ホラーじゃないけど、人間って怖い、そして自分にもこういう不気味な一面って
あるな、と、一見ありふれた若い人たちの生活小説風に見せてとんでもない話だった
この小説を読んで思った。

めちゃめちゃ余談ですが、キャスティング(映画の)を知らぬまま読んでたので
表紙だけ見て、美人設定の琴美が香里奈で、クセのある未来のほうが貫地谷しほり
だと思ってたら、実際は逆らしいとサイト見てちょっとびっくり。貫地谷さん
「ゴールデンスランバー」でも人気アイドル役だったし、美人設定が多い…
個人的には、今やってるドラマ「まっすぐな男」で、恋人を深田恭子に取られて
泣いちゃうまじめでソンしてる女の子役が一番チャーミングに見えたんだが。
by tohko_h | 2010-03-06 12:46 | reading