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「下流の宴」 林真理子

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「下流の宴」 林真理子
毎日新聞で連載していた小説。
中流(といっても夫は大企業のサラリーマンで
かなり余裕ありそう)家庭の主婦・由美子は
教育熱心な母に育てられたしっかりした女性。
悩みは、息子の翔が高校を中退したまま
20歳を迎えてしまったこと。そんな息子が
漫画喫茶でダラダラアルバイトし、ある日
突然、2つ年上の女性と結婚すると言い出した。
うちを訪ねてきた彼女は沖縄の離島出身で
スタイルも悪く、いまどきの子なのに顔が
大きい。こんな娘が来るなんて我が家は
「下流」なのかも・・・とあせった由美子は…


学歴、会社などで「ある程度の水準」のあたりに線を引き、その上にいて
こその幸せがある、と信じている由美子。
「普通の人より働いて稼いでもそんなの疲れる」みたいに笑い
島の居酒屋をやっている母親に育てられた珠緒。
ふたりの正反対の価値観を持った女性が正面衝突する構図。
また、都立高校から敢えて男性にもてそうなお嬢様大学を選び
女子アナや商社の一般職など男性受けする会社を選んで
就職活動をする翔の姉・可奈の独自の勝ち負けの考え方
(自分がキャリアウーマンになるより、立派なキャリアを持つ
男性に好かれて結婚して実家より優雅な生活が送りたい)。
この3人が主な女性登場人物である。

由美子と可奈の母娘は、最近の林真理子の小説にたくさん
出てくる東京の余裕のある家庭の女性たち、ということで、
良くも悪くも安定感のある描き方。それに対して、地方出身で
何も持っていない不器量な娘・という設定の珠緒は、
普段の林さんの小説には出てこないタイプ。彼女が
都会のお坊ちゃま・翔に愛され、その愛を成就するために
学歴や出身地で差別する母親にタンカをきり、ある
意外な方法で「脱・下流します」みたいなことを決意・・・

これ、話の展開が速く、リアルタイムで新聞で読んでいた人は続きが
毎日気になってただろうなーと思う。週刊少年漫画誌的な「毎回山場を
作って引っ張る」ということをきちんとしてるのはさすがベテラン林真理子。
ただ、新聞っていろんな層の人が読むわけで(由美子たちの家庭より
優雅で余裕のある人たちから、まあ、割と「下流」とされてしまうであろう層の
人たちまで)、そういう多様な価値観を持ちさまざまな環境で暮らしている
多くの読者がこれをどう読んだか、どんな反応があったのかとても
興味深い。

たぶん私みたいに、高校まで地方で公立&お嬢様大学行ってない&結婚しても
フルタイムで働いている(有名企業で、じゃなくて)、という経歴も
林真理子からみたら「イマイチなんだろうなー」と彼女のこの手の東京の
そこそこの層を描いた小説を読むたびにひそかに実は思ったりもする(笑)。
しかし、林さん自身が実はまさにそういう「地方から出てきてバリバリ働き
続けている」という(しかも大成功している)ジャンルの女性の第一人者でも
あるんだけどなぁ・・・そこから脱したから、もう振り返りたくない的なところが
あるのかなあ。ううむ。
by tohko_h | 2010-03-25 23:57 | reading