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「さようなら、私の嘘。」ヒキタクニオ

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「さようなら、私の嘘。」 ヒキタクニオ
何度も書いた気がするけど、ヒキタ氏の
描く働く女の人の話が割と好きだ。
「青鳥」(広告代理店…しかも多国籍な
社員の集まり)に「べりィ・タルト」(グラビア
業界に進出したわけあり美少女の話)、
「角」(出版社の校閲係の女性)などなど。
背筋を伸ばして働いて、志が曲がって
くるとつらそうにしてる。現実との
折り合いがつかないなりに、大人に
なろうともがく。そのずるくないところ、
一所懸命さがいとおしい。そして


そんなヒロインを見守るのは、とてもクセがつよくて、とてもいい男…っていう
物語的お約束は、勤労女子のファンタジー心を癒してくれる(笑)。

今回は、34歳の美奈が、PR会社で女社長の機嫌を損ねてしまい、
子会社のサーカス団の社長にされてしまうというお話です。
とってもこがらで華奢なのに大食いという意外と男らしい美奈と
上は老いたピエロから下は12歳の美少女まで、クセも濃さも、
半端ないサーカス団の人たちは、最初は違う方向を向いてます。
それが、次第に、タッグを組めるようになり、最後には…というお話。
とくにこのピエロのおじいさんのキャラクターは、魅力的。
皮肉屋で、意地悪で、毒舌で…でもね、という。


個人的にはこのシーズン、新入社員の人にお勧めしたい1冊です。
特に(おそらく大部分の)、第一希望の職種に就けなかった若いひとたちへ。
「なんで華やかなPRの世界で頑張ってきたのに、場末感漂う
サーカスに?」と暗い気持ちになる美奈が他人とは思えないはず。
私も、第一希望職種に就けなかった大勢のひとりなので、前半部分は
かなり感情移入しちゃいました。

※関係ないけど、そういう意味で、なりたくてなれたテレビのアナウンサーが
この季節に就職難のニュースを「大変そうですね」とか訳知り顔でコメント
してるところをワイドショーなんかで見ちゃうと、ちょっといらっとします。

タイトルの「嘘」というのは、かつて美奈がPRの仕事で「こんなもの」とか
「所詮この程度のタレント」的なことを思いつつ、これはいいですよーと
売りこんでいた「嘘」です。仕事にはある程度必要悪な、その手の嘘。
ただ、自分が取引相手や、落ち込む自分のためについていたことを忘れ
嘘に取り込まれてしまうのはやっぱりイヤですよね。
私も赤ペン手に「こんなもの!」とつぶやいたことは正直何度もあるけれど、
嘘ついている自分をたまに「バーカ」と、その腹黒さこみで自覚して、
それが「当たり前」にならないようにしたいと思いました。
by tohko_h | 2010-04-06 21:22 | reading