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「東京島」桐野夏生

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「東京島」 桐野夏生
うわーいやな本読んじゃった!というのが
たいていの桐野夏生作品読んだ直後の
感想である。で、落ち着いてくると、ああ、
でも人間ってこういう卑しさあるよね、とか
この程度のずうずうしさは自分でも同じ
立場なら発揮しちゃうかも、と、まったく
感情移入せずに読み終えておきながら
だんだん、身近な世界のお話だった
ように思えてくるのが不思議な感覚。
その奇妙な読後感を好んでるわけじゃ
ないのだけど、何かを確かめるように
つい読んでしまうのです、桐野作品。


今年の夏に映画になるということで、文庫化が比較的早かった
(ハードカバー発売は2008年)と思われます。

さて、お話の舞台は「ひしゃげた腎臓みたいなかたち」の島。
隆と清子、という40代の夫婦が嵐で遭難、無人島でふたりで
心細く暮らしています。そこにやってきた20人以上の若い男たち。
彼らも又別の船で遭難して、島に流れ着いたのでした。
こうして、無人島だった島に「東京島」と名前をつけて、男たちと
清子の暮らしは始まるわけです。
いわゆる「男の中に女がひとり」=紅一点状態、ということに。
全ての男たちの関心と欲望を向けられる存在になったことを
自覚した清子の厚かましさ、サバイバル観に「何この女」と思いつつ
「やるなあ」と思ったりも時々してしまう感じで読み進めました。
(期待してたという意味ではなく(笑))もっとエロティックな方面で
話がどろどろするのかな、と思いましたが、無人島であれもこれも
不足している中でも、複数人がいれば「社会」らしきものが構築され
人々は上下関係を作り、自分が生きる道を他者との関係を計算しつつ
模索していくものなんだな、という、当たり前のようでいて凄い過程が
興味深かったです、読んでる間ずっと。

しかし、読み終えると、こうして温かい布団の中でパソコンいじってる
自分がすごく贅沢なことをしてる気になってきます・・・

実はこの小説、実際に太平洋戦争終戦前後にあったアナタハン事件
ネタ元だそうです。
こちらでただひとりの女性となった人は、20代の若さだったようですが、
桐野さんはヒロインを40代にしてるところにも注目、です。

定価580円(税込)→実感価格420円(72%)
読み返すことは、なさそうだし…(ヘビを捕まえて食べるとか、結構えぐい生活の
描写が多いので、ニガテな人は生理的レベルでつらいかも。排泄とか体毛とか
普通小説や漫画が避けて通るというか無視してる部分も描いてるところは
凄みありすぎだし)。
by tohko_h | 2010-04-24 23:47 | reading