まだまだ坂木司祭り! その3「ワーキング・ホリデー」

a0079948_21334369.jpg
「ワーキング・ホリデー」 坂木司
それは夏の始まりのある日。
元ヤンキー、今は不器用なヘルプのホストを
している大和のもとに現れたほっそりとした
小学5年生の男の子。彼…進は、こう言った。
「初めまして、お父さん」。
元彼女がオレの子を産んでいたなんて
聞いてないよ、とあせりつつ、夏の間、実の
父親と暮らしてみたい、という進と、戸惑いつつも
人情に厚いヤマトの生活がスタートした。


「子持ち」になった大和は、宅配便のドライバーに転職し、しっかりものの
進は、朝ごはんを作り、寝起きの悪い父親を起こして宿題をする。
そんなふたりを見守る宅配便業者の個性的な面々に、元勤務先の
ホストクラブ(と、新勤務先の宅配便屋)のオーナーの美オカマ・ジャスミンさん、
王子様系ホストの元同僚に、元お客のぶっとんだお嬢様…誰もが少しずつ
どこかおかしいけれど、優しい人たちばかりで、ふたりは、父子として
しだいにぎこちなさを取り払い、けんかをし、真剣に向き合う時間を持つようになる。
しかし、「夏休み」には、タイムリミットがあるのだ…

…夏休みって、特別な季節だ。
殊更に、子どもにとっては。
暑いけど、果てしなく自由で、なんでもできそうな手付かずのおよそ40日間ほどの
長い時間。
その期間限定の誰のものでもない白紙の時間に「お父さん」と暮らすことを
選んだ進は、母親に苦労させないように努力してきたような「なんでもよくできる子」
といったイメージのしっかり者。だけど、人情に厚い、本音だけで生きているような
(だからホストには向かなかったわけだ)大和と暮らすうちに、わがままが言えるように
なったり、子どもらしさを取り戻していく。そのプロセスが、昔ながらの児童文学みたいで
とてもよかった。物語は大和目線で進むんだけど、進がだんだん可愛く子どもっぽい
顔を見せていく様子を、大和と一緒にいとおしみながら読んだ。
「お父さん」とだけではなく、たくさんの大人たち、そして町の子どもとも友達になり
たくましく、そして子どもらしさまで取り戻した進が最後に起こす「事件」には、
ちょっとほろりとさせられる。

元ヤンキーで、でも困ってる人はほっとけないお節介で、お人よしでお調子者の
憎めない大和くん…ドラマにするならTOKIOの背が高いひとたちのどっちか
(長瀬君か松岡君)が似合いそうだ。進くんは・・・子ども店長はちょっと(苦笑)。
そして迫力のラテン美人(の、オカマ)・ジャスミンさん(この人が、説教にならない
程度に教訓っぽいいいことをちょこちょこ言う。大事なサブキャラです)は誰が
いいかなーとテレビを見たら、あら、矢島美容室(笑)。

というわけで、ひとなつの父が大人に、息子が子どもに…それぞれがそうあるべき
気持ちになれた素敵な、ささやかなお話です。
冬休みの親子を描いた続編もあるそうなので、楽しみです。
続編出たら、ハードカバーでもすぐに読みたくて買ってしまうかも。

定価650円(税込)→実感価格840円(≒130%)
文庫本で600円台って、最近の本の中ではリーズナブルな印象(昔は
文庫って、3、400円台が主流だったのにいつのまに…)。そんな値段で
かわいい装丁と気持ちよく読める楽しい話が手に入ったわけなので、
大満足。340頁ほど、とさほど厚くないけど、面白くて読みとばす場面が
なかったので、ちょっと高くてもいいかなと思いました。
[PR]
by tohko_h | 2010-05-03 21:36 | reading