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「星がひとつほしいとの祈り」原田マハ

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「星がひとつほしいとの祈り」 原田マハ
装丁とタイトルの美しい本だ。白くて
シンプルなカバーに星がきらりと光る。
あとは文字だけの潔いカバー。
その潔い装丁になったのももっとも!と
納得してしまう、すっきりと美しい
短編小説集だった。


「椿姫」
妻ある人との先のない恋愛の結果宿した子ども。その始末のために
病院に向かう若いデザイナーが見かけたのは…

「夜明けまで」
大女優だった母の死を旅先で知った娘。遺骨をある場所に届けて
欲しいという風変わりな遺言に従い、母が捨てたはずの故郷の田舎町へ。

「星がひとつほしいとの祈り」
仕事に疲れたコピーライターの女性が旅先でマッサージ師の盲目女性から聞く
戦時中のある愛の物語。政治家の令嬢とその使用人の女性の友情が美しい。

「寄り道」
仲良しアラフォー女性2人組はバスツアーに参加する。ひとり場違いで感じの
悪い若い女の子がつっかかってきて気になる。なぜ彼女は白神山地に来たのか。

「斉唱」
話が通じにくい反抗期の娘とともに校外学習に参加することになった母親。
トキを見に佐渡島にいった母と娘が出会ったものは?

「長良川」
鵜飼いを見に母親を連れてた新婚の娘夫婦。ここ、長良川は、母親にとっての
思い出の地だった。2組の夫婦の平凡ながら安定した愛情がなんともいい。

「沈下橋」
テレビで見かける人気歌手は、一瞬だけ私の娘だった。再婚相手の連れ子だった
女の子と、ぎこちないながらも母親を務めた女の、思わぬ再会。

「長良川」以外は、ある人間関係の問題を抱えた人たちが、ひとつのきっかけで
大切な相手や自分を取り戻すという節目を見事に切り取った短編ばかり。
表題作の、「星がひとつ~」を読むと、世話係の女性の献身的な愛情と、それを
理解して誰よりも大切に思う令嬢の(身分の差を超えて彼女に敬意を抱くに
到る)想いに打たれる。恋愛でもなく、家族でもなく、ただ相手のことを守りたい
人として大切に思いたいという気持ちで結びついた女の人ふたりが美しい。
別記事でそのうち書くと思うけど、
別の作家の作品で、作家本人は美しいと思って書いたんだろうけど
これは不健全だし排他的でいやだなあと思った男性同士の関係性を描いた
小説を最近立て続けに読んだので、その反動もあり、打たれました(笑)。

定価1575円→実感価格1575円(100%)
装丁を含めればこれで決まりさ!←ハイティーンブギ風。

正直、この作者については、原田宗典の妹らしいし、宝島社の
新設した賞でいきなり大賞ゲットしてデビューって、なんかそれって…と
読む前からあまり良い印象が持てなかったというか、コネ的なものも
あるのかなーと素直に読めなかったんだけど、この前読んだ
「インデペンデンス・ディ」もよかったし、これからは素直に注目していきたいと思います。
by tohko_h | 2010-05-16 12:18 | reading