宮部みゆき「小暮写眞館」

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「小暮写眞館」 宮部みゆき
700ページを越える分厚い宮部みゆきの
新刊。読むのに1週間かかりました・・・
前半6割は、一生読み終わらないんじゃないか、
というくらい進まない進まない。ところが、
半分まで読み、さらにその先に行くと、加速が
ついて、最後は涙がだーっと頬を滑り落ちて
いたのでした。


高校1年の英一の両親が買ったのは、商店街にある「小暮写眞館」と
いう建物。かつて写真屋さんだったその店舗を自宅として選んだ
風変わりな両親と、優等生で私立小学校に通う弟の、今は4人家族。
高校に行けば、歯科医の息子で風変わりなおぼっちゃま・テンコや
色黒な甘味屋の娘・コゲパンなどの友だちがいる。

…実は宮部みゆきの描く「はつらつとした若者」っていう感じが、以前から
ものすごーくニガテだったので、前半の、英一の高校生男子っぽい
(宮部氏が考えるところの)潔癖さ、賢さがなんとなく気持ち悪くて
(いや、普通は「爽やかでよい子」って思うんだと思う。これは私の主観で
気持ち悪いだけで)ほんとうになかなか進まなかった。

いや、現代日本を舞台にしてて、生き生きした口語体で通して
書かれてるって意味では「読みやすい」部類の小説なんだろうけど…

あとは、ミステリーだと思うとまず読めなくなります。高校男子・英一くんの
まったり系ひとり語り青春小説だと思っておいてください。この語りが
大人が頭の中で考えた高校生男子のそれ、って感じがして、なんだか
独特の文体で、なれるまでは、相当くどくかんじると思うし、もっといえば
大人が考えた「高校生ってこの程度には子どもだよね」的な目線に
苛立ちます。その代わり、英一の弟の小学生男子はしっかりもので
けなげで弱弱しいところもあって、なんか萌え狙い?ってことで、これもなー。

実際に営業してる写真屋と勘違いされて、写ってはならない人の顔が写ってる
ある種の心霊写真が持ち込まれ、その謎を解く最初の2章は、ぶっちゃけ、
本当につまらなかった。ただ、そのつまらなさを耐えて読み進むと、話は突然
展開を始める。自分たち家族のある問題に向き合うことになる。それまでの
のらりくらりとしていた語り口もお話の進むペースも変わる。そして英一の
初恋の不器用さにグッときたりもして、気づくと涙ぐんでいた。

しかし、そこにたどり着くまでが本当に苦行でした。
3段の跳び箱飛ぶのに何キロも助走させられた感じ。
ネットなどで「これ、半分の長さになったんじゃないの?」という読者の意見も
見かけるし、私もホント、そう思います。最後まで読めばよい小説だなーとも
思えるんだけど、トータルで見るとバランスが悪く、くどい(本筋に関係ない語りで
キャラの魅力を見せるという小説はあるけど、これについては、ただの脱線に
なってるような・・・)。

定価1995円(税込)→実感価格750円(≒37.6%)
文庫本でもいい気がする。あと、すごく時間があるときに、前半の苦行に
チャレンジして「これ、ほんと面白くなるの?」ともやもやしてみるのも
ひまなときならいいかもしれません??
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by tohko_h | 2010-05-21 23:14 | reading