「夜行観覧車」湊かなえ

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「夜行観覧車」 湊かなえ
「告白」で衝撃のデビュー!から、
あっという間に人気作家になった
湊さん。書くペースも割と早い。
というわけで、新刊です。
今回の舞台は、高級住宅街。
長年住んでいる地元の顔的な
おしゃべりおせっかいなマダム、
引っ越してきた、経済的にも
精神的にも余裕がありそうな医師家族。


そして、区角整理であまった半端な狭い土地を買い、
無理に小さな家を建ててこしてきた「この街にそぐわない」家族…

「幸福な家庭の顔はお互い似かよっているが、 不幸な家庭の顔は
どれもこれも違っている」
(アンナ・カレーニナ)
と書いたのは、ロシアの文豪・トルストイだけど、この小説も、そんな感じの
話である。たぶん、経済的に恵まれた者しか暮らしていけない高級住宅街に
家を構えている家族は、外から見ればどれも「似通った幸福な家庭」に見えて
いるはずだ。余裕があって家族も仲いいんだろうなーなんて思われてるんじゃ
ないだろうか。実際、この街に引っ越しすることになった少女は、物語の中で
同級生たちに「高級住宅街に引っ越してお嬢様になるんだ」と、その幸福を
妬まれていじめられすら、していた。

しかし、親の見栄と夢によって、転校を余儀なくされ、学力に見合わない
中学を受験させられることになった彼女は、不幸な少女となる。

また、隣の、余裕のありそうな医者一家でも、それなりに親子の葛藤は
あり、ぶつかりあいもあり、そして、妻が夫を撲殺してしまうに至る。

更に、おせっかいで噂話だけを楽しんでる悪気のなさそうなおばさんも
いつまでもひとりで二世帯住宅に暮らしていることを不満に思ってる。

そういう、その人なりの不幸や不満を抱えている人達が、医師撲殺事件を
きっかけに、自分たちが幸せではないことに気づき、荒み、他者を傷つけて
自分はまだ大丈夫と思おうとしたり、人間の醜い面を次々と見せていく…
そういう、いやーな小説です。

湊さんの、語り風の文体はだんだん板についてきたみたいで、
偉そうな言い方になっちゃいますが、だんだん「お話」から「小説」に
なってきてる気がします。高級住宅地に住むいやらしい心根の
中年女性の一人称語りなんて、こういう人いそう~と説得力ありました。
…そんな進化に期待を寄せて、好きな作風じゃないけど
ついつい新刊チェックを続けてしまうんですよね…(ちなみに私と
同い年の作家だというのもあるかも)。

定価1575円(税込)→実感価格1000円(≒67%)

ちなみに、この感想文を書くのに、トルストイの名言を思い出そうとしたんだけど
なかなか思い出せずに「あれ、チェーホフだっけ?」とか、相当悩みました。
ぼけてる~。
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by tohko_h | 2010-06-02 12:03 | reading