「広島に原爆を落とす日」@渋谷シアターコクーン
2010年 08月 30日「広島に原爆を落とす日」
作=つかこうへい
演出=岡村俊一
監修=杉田成道(北の国から、が有名)
主演=筧 利夫
キャストが特にそそる感じじゃなかったのですが、つかさん逝去、の報道を見て
あわててチケットとって見てきました。お話は、広島の原爆投下が実は、ある男が
自分の愛する女のために命がけで落としたことだった、というつかさんらしい
はったり感のあるストーリーでありながら、セリフは真実だらけで痛い、という
ものでした。筧さん、長セリフかみかみでところどころ聞き取れなかったのが残念。
でもセリフが自分のものになってるから、そのキャラがかつぜつ悪いのかも、とまで
思わされるのが凄かった。
アイドル女優だと思っていた山口紗弥加さんが凄くうまかったのは嬉しい驚き。
たまにテレビドラマでちょこちょこ見かけていたけど、小柄でも大きく見せる動きとか、
たたみかけるセリフも明瞭で力強いところとか、凄い技術の持ち主だったのね。
凛としてて素敵だった。
作中、印象的だったセリフは
「ものに名前をつける、それが文化というものです」。
灰皿と茶碗、どっちも同じ焼き物で似たような形の器ですが、灰皿とか茶碗、という
名前をつけることによって人は灰皿でメシは食わないし茶碗にタバコを入れない、
みたいな話が続いてたと思うんだけど…演劇の世界で「ものには名前がある」と
いえば、どうしてもヘレンケラーの「ウォーター」を連想してしまうのですが。
掘り下げると、土地に名前をつけたら「国」になるし、争いにもそれっぽく
「戦争」という名前をつけて…戦わざるを得ない理由をくっつけて…本来
人の生活を豊かにするためにあるべきものが人の幸福を奪うこともあるなーとか
じわじわ来ました。
「国のために人がいるのではなく、人々のために国があるはずだった」みたいな
セリフもそういえば、あったっけ(見てから1週間以上経ってるのでうろ覚えですが)。
あと、米国人役のリア・ディゾンの「あなたマクドナルド好きでしょ. スターバックス行くでしょ」
という(それはすなわち、今の日本を生きる私たちに対して「アメリカ好きよね?
親愛の情持ってくれてるよね」とうったえてるわけだ)叫びもあとで何度も思い出した。
最後のタキシードで群舞っていう、つかさんのお芝居のお約束のエンディングの後
アンコールで誰もいないステージにスポットライトがぽつりと。
最後だけが、追悼公演っぽい1時間50分でした(休憩なし)。