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「インシテミル」米澤 穂信

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「インシテミル」米澤 穂信
映画を見に行くと、ホリプロオールスターズ、と
いった感じのある意味露骨なキャスティングで
派手な予告編がながれてる「インシテミル」。
主演が藤原竜也でヒロインが綾瀬はるか。
ちょっと気になるサスペンスタッチではあったので
読んでみることにしました、原作小説。お話は、
11万2千円の報酬につられ「ある実験」のアルバイトに
応募してきた12人が集められるところから始まります。


彼らは、7日間24時間、全てを監視されている状態で、暗鬼館、という
地下の施設で暮らすことになります。そこで行われる実験は、殺人。
それぞれに与えられた武器、誰かが死んだときの探偵役には時給UP
など、殺人ゲームの舞台に彼らは閉じ込められてしまったのです。
全員がまったりすごして誰も死ななければ、みんなそれぞれ、
11万2千円×24時間×7日分…1800万円以上をもらえるのだから
黙々と過ごせばいいのだ、と、主人公のお気楽青年・結城を中心に
それぞれは話をして意思確認をするが、第一の殺人はあっけなく起こった。
猜疑心と恐怖が彼らを支配していく。1週間後に笑うのは誰? いや、
生き残っているのは誰?

こういう閉ざされた空間に閉じ込められた人たちのサスペンスって、
定番ですよね。大体「オレはこんなやつらといたくない。まっぴら
ごめんだね」って肩をすくめて出て行って個室にさっさと入った人が
最初の被害者になったり、お約束だらけのお話。それを逆手にとったのが
この作品といえましょう。それぞれの人物たちに与えられる凶器には
メモがついており、過去の有名推理小説の中でどうそれらが殺人に
便利だったか、が律儀に説明されているわけです。ミステリマニアだったら
なるほど!と楽しめるワザだと思います。

たしかに設定もすごいし、意外性のある展開に「そうきたか!」とだまされた
喜びも味わいました。

が、しかし。読み終えたあとは、満足感を得ました、とまでは、いえず。

この小説を読むことによって、私はあることに気づいちゃいました。

「自分は今まで、ミステリー小説を、人間ドラマとして読んでいたのね」
ということです。ひいきの東野圭吾も横山秀夫も、登場するキャラクターが
興味深く個性的な人間たちなので、その魅力につられて読んでおり、
事件や推理は、オマケくらいにしか思ってなかったらしいです。

この「インシテミル」は、12人の人間についての情報量がとても少ない。
大体の年齢とざっくりした外見の描写と、あとは「この人がリーダー」とか
いつのまにか文章で説明されてて、なぜその人物がリーダーシップを執るべきと
判断されたか、とかまでは掘り下げられてないので・・・どのキャラクターも
物語を進めるためのコマにしか見えなかったのです。「実験」を行った
彼らを集めた主にとっては、彼らは殺人ゲームを演じさせるためのコマに
すぎなかったように、この作者にとっても、登場人物たちは、この小説の
トリッキーな展開を成立させるための要素にすぎず、ひとりの生きた人間としての
存在感は必要ないんだな、という感じの書かれ方でした。

ゲームみたいに誰かひとりの人物を選んで、その人になりきって読むとか、
そういう読み方をするには、この「登場人物はいるけど、どの人もキャラクターが
薄い」という形式、有効なのかもしれません。

でも私は、この人どこかに生きてるかも、みたいな、人間が立体的に描かれて
いる感じの小説のほうが好きみたいです。面白かったけどこういうタイプの
推理するために特化した推理小説、は、自分の読みたい小説とは違うことが
わかりました。

税込720円→実感価格500円(≒69%)

あ、ちなみに、ヒロインの、つかみどころがなくてキレイなんだけどどこか
ずれてて不気味ですらあるお嬢様役は、ホリプロ映画なら、綾瀬さんより
深田さんのほうが合ってる気がしました(私は綾瀬さん好きで深田さんは
どっちかというとかなりキライなんだけど、イメージは圧倒的にフカキョンだった)
by tohko_h | 2010-09-28 23:29 | reading