「ある日、アヒルバス」山本幸久
2010年 10月 26日「ある日、アヒルバス」(文庫版)山本幸久
東京都内を中心に走る観光バス会社アヒルバス。
そこで働くデコちゃんこと秀子は、仕事が
嫌いなわけじゃないけれど、いつまでも
続ける!と決めているわけではないし、
将来の不安らしきものもないことなくて。
…そんなある日、突然、新人ガイドの研修
という重大な任務を命ぜられた秀子は…
この「泣ける」とか書いてる帯はまずはずして忘れて読むべし!です。
山本幸久のお仕事小説にハンカチ持って向き合うなんて、ばかばかしい!
面白がって笑って笑ってちょっと考えて「私も、働こう、自分のすべきこと、
しよう」って思えれば、それで十分なんじゃないかな。ちょっと胸が熱くなって
涙が出たとしてもそれはオプションってことでよろしくですー。
自分が人生で就ける仕事の数には限界があり、だからこそ、やったことは
ないけど知ってる仕事の裏側には興味があるわけで。そんな好奇心を
満たしつつ「文句言ったり不安だったりむかつく人がいたり、職場って
なんだろ。謎多すぎ。でも、お給料分以上になんか時々頑張っちゃったり
するんだよね」という、まっとうな勤め人キャラの姿に勇気付けられる、
いつもの山本作品のよさが盛り込まれた1冊です。
一緒にやけ酒飲んだり、時には「それは違うよ」って言ってけんかしたり、
そんな風に、威張らず、カッコつけず、ガチで仕事の話ができそうな…
この「アヒルバス」という会社にもそんな人たちがいっぱいいます。鋼鉄の
女と呼ばれる怖いベテランガイドも、研修を手伝ったり献立でえこひいきを
してくれる寮母さんも、オダギリジョー気取りの秀子を口説いてくる運転手も
毒舌を吐きつつ意外とキャリア志向の同期ガイドも…ああ、こんな人
職場にいそうだ、と、バス会社で働いたことなんてない私が思ってしまうのが
不思議です。で、面白い!
定価760円→実感価格800円(≒105%)
これはぜひ、元バスガイドで、アヒルバスのモデルになった某鳥の名前バスの
ガイドさんと浅草など観光名所の駐車場でガンとばしあってた、という(笑)
うちの母にも読ませなければ。ていうか、はとバスでも乗せてみるか(笑)。