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「凍花」斉木香津

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「凍花」斉木香津
美しく優秀だった27歳の長女が、
奔放で派手な25歳の妹をアイロンで
撲殺するという事件が起きた。
21歳の三女は、姉たちの間に何が
あったのか、どうして事件が起きて
しまったのかを調べ始める…
家庭内殺人という重苦しいテーマを
あつかった作品ですが、ミステリー
というより、完璧でいようとする長女の
心の悲劇を描いた物語ともいえましょう。


我が家は(それはそれでどーよ、と思うけど)、次女である妹が生まれたときに
「なんか、姉より、よい子がでてきた気がする…」とほっとしたムードが漂った
らしく、いわゆる、姉娘の私に「しっかりしなさい」的プレッシャーは無く、むしろ
妹の方に「お姉ちゃんのいいところだけ見習って、ダメなところは反面教師として
同じ轍を踏むな」みたいな、ハードルを上げるようなところがあったんですね。だから
いわゆる「お姉ちゃんが我慢しなさい」的な長女の苦悩っていうのは味わうことなく
大人になれた能天気長女、が私なのですが・・・(それはそれで間抜けか)。

それでも、この、完璧長女に感情移入してしまう面、ありました。
下に生まれた人って、そらすのがうまいタイプが多い気がします。親の
圧力とかもそうだし、姉や兄から言われたことなんかも、それがおかしなこと
だったら話半分にスルー、みたいな、世渡りスキルが高いんです。それは
上のきょうだいが失敗したりうまくやったりするところを見て学んでいくことが
できたからだと思うんですね。しかし長男長女は、未開の地に踏み込むことしか
できないので、真面目に人の言葉に傷ついたり、冗談が通じにくいタイプだったり、
なんか、真正面まっしぐらというか、なんでもガチなタイプが多い気がするんです。

私みたいなちゃらんぽらんな人間でさえ、妹と比べてなんて要領が悪いんだ!
と、私よりいやな目にあってるときでもちゃんと自分を保てている妹をみつつ
自己嫌悪、なんてこともあります。

なので、この作品内の姉が、自分の欠点を適度にさらしつつ社会生活を
上手に送っている妹たちに対して複雑な思いを抱き…というのは、部分的には
わからなくもなく。

どうしても女性の心の動きを描く小説というと、恋愛ものが多い気がするんですが
最初に家の中で出会う女きょうだい同士の葛藤というテーマにサスペンスを
からめて読めるタイプの小説ってあんまり読んだことなかったし、なんだか
色々考えたり想いを巡らせられました。家庭内殺人という救いのない事件で
始まった小説ですが、最後に希望の気配を感じさせて物語を閉じるあたりも、
好感が持てたし、素直に読み終えることができました。

定価1575円→実感価格1575円
ハードカバーで読んでも納得、の1冊でした。2度くらい読み返す
可能性もあるので、このお値段で。
by tohko_h | 2010-11-02 14:10 | reading