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「婚約のあとで」阿川佐和子

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「婚約のあとで」阿川佐和子
今まで、いろんな作家の短編を集めたアンソロジー
などで読んだことはあるが、正直、作家の娘
だから書かせてもらえてるんだろうな、あるいは
有名人枠かーみたいな感じで…まあ、さほど
面白いな、と思ったことがなかった阿川作品。


しかし、最近、殺伐としたミステリーばかり読んでいたので、ちょっと普通の
女性たちの恋愛とか仕事がどうしたこうした、みたいな話が読みたいなーと
思って(まあ、普段だと、唯川恵とかをこういうときに読むわけだ)なんとなく
新刊文庫コーナーから一本釣りしてみました。

親の友達の紹介で出会った男と婚約した直後、相手は海外赴任、自分は
責任ある仕事をまかされ、宙ぶらりんになってしまう理系お嬢の波。

波の妹で、母と姉・波の仲のよさを横目で見つつ、地味な妹娘としてずっと
生きていたのが、許されぬ恋に落ちてしまう碧(あお)。

波の働く化粧品会社がパッケージのデザインを頼んだ新進気鋭の、才能と
奔放さに恵まれた真理。

波の友達の友達の主婦で、浮気な夫とちょっと身勝手な姑に振り回されて
おり、家族のための毎日に疲れている優美。

デザイナー・真理のビジネスを支える有能主婦で、なんだかとっても
ミステリアスな凩(こがらし)さん。

碧(あお)の禁じられた恋の相手の娘で、5歳の時に盲目になり、今は
ベトナム語の通訳などで自立を目指している宙(そら)。

自分を好きになってくれそうな男と結婚したが流産してしまい、それ以来
心の中がなんとなくもやもやしている花。

この7人の女性の恋愛や仕事や人生の話が、数珠つなぎにつながっていく
読みやすい構成です。

友達同士、主婦と働く女、姉と妹、母と娘…女同士の関係の描かれ方が
割とリアル。割と経済的には恵まれた感じの人たちが多いようですが、
衣食住に困って無くても、生きるのが大変なことはやっぱりあるわけで。

美男美女が華やかに派手なセリフを言い合うような話じゃなくて、電車や
居酒屋で居合わせるかもしれない普通の人たちが地に足をつけつつ
それでも「なんか違う」と違和感を魚の小骨のようにおぼえた瞬間をさくっと
絶妙にすくい取った小説だと思います。

優美という女性が名前を名のって「確かにお優しそうでお名前にぴったりの方ね!」と
褒められてお愛想笑いをかえしつつ
(これはいつも言われるが、美しい、のほうにふれられたことはない)と毒づくとか、
二股状態になったあるヒロインが、ふたりの男を脳内でしたたかに比べて「こっちの
ほうがキスもうまいし食べ物の趣味も合う」と、見かけとか財力じゃなくて、味覚を
意識して考えちゃうとか、ディテールが面白いです。

定価660円→実感価格700円(読み応えがあったので)
※期待して無かったからこそ、なんか、点数が高くなってる気はしますが。
by tohko_h | 2010-11-10 11:41 | reading