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「白砂」(はくしゃ)鏑木蓮

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「白砂」 鏑木蓮
大学進学の費用を貯めるために上京し、質素な暮らしを
続けていた天涯孤独の二十歳の女性が自室で殺害された。
同年代の娘を持つ刑事・目黒は、部下の山名刑事と共に
被害者のためにも犯人を必ず挙げると誓う。彼女の部屋には、
亡くなった人の遺骨で作るペンダント…という一風変わった
アイテムが残っていた。その骨は誰のものだったのか…


さて、この本の帯には「せつないミステリー」というキャッチが書いてある。
せつないって便利な言葉で、ちょっとさみしげで胸も痛くなりそうで…
「泣ける」とあおった本ほど売れるといわれる日本において、帯や広告で
使いたい形容詞ナンバーワンかもしれない。
それを見たので、読む前に「ミョーに感傷的でべったりした感じの小説なのかな」と
先入観を持ってしまったひねくれものの私。そして、読み始めると、やはり、都会の
隅で貧しくもけなげにいきる女の子が殺されて…うーん、いかにも「せつない」のだな、
と、センチメンタルでありふれた小説なのかな、と思った。

たしかに、刑事の入れ込み方も、事件関係者の情緒に沿って進めていく捜査も
しっとりしてて…地味といえば地味である。だけど、刑事の人柄とか、部下の刑事との
やりとりに人間らしいユーモアがあって…ただの探偵役になっていないところが
魅力的で、だんだんひきこまれていった。また、事件に直接関係がない人間も
ただ証言をするだけじゃなく、成長したり、心を痛めていたり、と、それぞれの気持ちが
描かれていて、ちょこっとずつ感情移入させられてしまうのだった。

特に、目黒刑事と部下の山名刑事のやりとりがよい。目黒の愛娘と親しい山名に
口うるさくけん制を続ける目黒、飄々とそれをかわして懲りない明るい山名。
悲しい事件の辛い捜査だが、ユーモアを忘れず、一生懸命に人に会いに行き、
自腹で遠くまで調査に行こうとしたり…人間ドラマとしてとても魅力的でした。
またこの刑事さんたちが別の事件に挑むシリーズを読みたいな、と思いました。





というわけで正しく「せつない」良い小説だったのですが・・・

事件のカギを握る写真に写っているある人物の話をするときに、たとえば
「このショートカットの女性」とか「あの背の高い男性」と言うならいいんだけど
たまたま帽子をかぶっていたキャラがいたために、何度も何度も、そいつ、

テンガロンハットの男

と呼ばれまくっていました。
「テンガロン」って響きが陽気すぎて、なんだか笑ってしまいました。
イメージ的には、ゴルフの片山さんの顔が浮かんできてしまう…
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でもこれ、ほんとによかったので、お薦めです!
この作家さんの他の作品も読んでみよう(年末年始あたりに)と決めました。
by tohko_h | 2010-11-15 17:19 | reading