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映画「あしたのジョー」

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ドスの効いた尾藤イサオの♪サンドバッグに~というテーマソングと
ラストシーンが有名な「あしたのジョー」。連載当時は、梶原一騎
(ジョーのときは高森朝雄名義)とちばてつやが繰り広げる世界に
多くの人たちが魅了され、ある世代の男性にはバイブル的存在だったと
いう国民的名作漫画である。

貧しい孤児で不良少年だったジョーが、もとボクサーの落ちぶれた男・
丹下段平と出会いボクシングを教わり、やがてプロの拳闘家となって
いく物語だ。

人々をもっとも熱狂させたのは、不良少年時代に少年院で出会った
力石徹とのライバル関係と、ジョーと力石の死闘のあたりであろう。
力石はジョーより大男なので、骨も太い。普通、ボクシングの場合、
体重別に階級が分かれており、力石はジョーより2階級上なんだけど
少年院時代の決着をつけるために、無理な減量をしてまで、ジョーと
同じリングに立とうと必死になるのだ。この力石が死んだときなど
(ネタバレすみません、でも、有名な話なのでお許しを)、葬式を実際に
行ったということで、たぶん、日本初のマンガのキャラの葬式だった
んじゃないかなー(最近だと「ラオウのお葬式」@北斗の拳、も
あったような…)。

という、昭和を代表するとにかくすごーい骨太なマンガを、
山下くん(ジョー)と伊勢谷さん(力石)という、平成の美青年ふたりで
映画化…原作漫画を途中までしか読んでいない私は、まあ、
有名な作品だし、山下君割と好きだし、丹下段平に香川さん、なりきってるし…
※参考画像
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と、割とミーハーな感じで観にいったのです。

レディースデーだったこともあり、場内は女性で満員。
皆、山下くんや伊勢谷さんがお目当てなんだろうなーボクシングマニアとか
梶原イズムの信者みたいな女の子がこんなに大量にいるわけないもんな、とか
昭和に思いをはせながら座ってると、はじまりました!

おお、昭和の暗いニュース映像風の雑踏に、あのテーマソングのイントロ!
いいぞいいぞ、におってきました。そう、汗のにおい、昭和のドヤ街のにおい、
貧乏食堂の安いだしのにおい、川べりの生臭い感じのにおい…そんな
におうような映画じゃないと、これはダメだと思うんです。ジョーと丹下が
出会い、生きているドヤ街は、ここを追い出されたらどこにも行けない、という
お金も家族もない人たちが肩を寄せ合って暮らしている…町全体が
貧乏長屋みたいなドヤ街。子供たちは元気いっぱいだけど、大人は色々な
ものを失い、また、諦めている…絶望のにおいがしている。で、ドーン!と
タイトルロゴと、古臭いフォントでキャストと監督の名前が入って本編へ。

最初の方は、ジョーの不良としてのケンカのシーンが続きます。
ぼろぼろのハンチングも似合う山下くん。ちばてつや先生の描くジョーの
くるんとかわいらしい感じ(初期の絵柄は子供っぽい顔してるし)と
違和感なく面影が重なります。山下くんは、実は、やり手の医者でも
ヘタレなバスケ選手でも華麗なサギ師も…その顔になれる画面映えの
よい、俳優さんとしても魅力のある人だなーと再確認(「あしたのジョー」の
パンフレットで、香川照之も「役者っていうのは一番いやなことをやりきる
様な仕事。で、山下くんはそうあろうとしている、たいしたものだ」みたいに
絶賛してました!)
そして少年院でのバトル。
力石との闘い。力石はもとボクサーだったのに、少年院に入ってます。
それでも所属ジムの令嬢・白木葉子は力石の出所後、彼をプロとして復帰
させます。葉子の香里奈は、見せ場があまりないからしょうがないのかな、と
思うんだけど、普段は器用に地味な役も派手な役もこなすチャーミングな
存在感を出すところまではいかなかったようです(でも画面に白いワンピースを
着て華を添える役割は果たしてた)。そしてジョーも少年院を出て、
丹下の直接指導を受け、ある必殺技を引っさげて、華麗なるプロボクサー
デビューを飾ります。最初は「酔っぱらいの丹下と不良少年のジョーが
ボクシング?」と冷たい目で見ていた街の住人たちも「こんな貧しい街から
出世してスターが出るんだ」と、だんだん目に光が宿ってくるんです。
このへんの描写もちょこちょこ挿入されてて、胸を打たれました。

主人公のジョーは、熱血キャラではなく、どこか冷めてて、でもかわいい
ところもあって、白木葉子がウッカリ惚れてしまいそうになる独特の色気も
あって、というかなり面白く魅力的なキャラクター。それに、ボクシング同様
真面目に食らいついた山下くん、素敵でした。腕や脚の線が特に奇麗で
ボクシングシーンも迫力十分。顔を殴られるシーンで、歪んでもゆがんでも
美しいのには「…この人、ほんとうにきれいなんだ」と変な感動も(笑)。

そして、力石の「2階級分体重を落としてジョーに挑む」という設定を
自分の肉体で表現した伊勢谷さんには、びっくり&感動。力石の
計測シーンで、バスローブを脱いで体をあらわにしたところで、映画館は
ため息に包まれました。元々すらりとしてスタイルのいい伊勢谷さんですが
骨ばって、肩とか腰とか…「人間ってこんなところにも骨があるんだ」と
見たことのない形で骨が出っ張ってるのです。限りなく「骨と皮」に近い
状態で、でも筋肉は残すって、この「役作り」は、ちょっとすごすぎです。
更に、めちゃめちゃクールな役柄なんだけど、時々浮かべる笑みの表情が
すっごくカッコいい。東京芸大卒のアート寄り知的イケメンのイメージが
あったんだけど、今回は、野性的で悲しみを帯びた男になりきってました。
…うっかりファンになりそうになりましたよ、あるカットの表情に惚れてしまい。

そして、もちろん香川さんの丹下…先に、宣伝用の扮装写真を見ていたので
逆に、やりすぎでウザくなってないかなーと(香川さん本人がボクシングマニアで
あしたのジョーも愛してるし、芝居の濃さに定評があるからこそそれが裏目に
出てるケースもあるかな、と)思ったんだけど、ジョーをかわいくてたまらない
育てたくてたまらない、という狂気と紙一重の情熱と愛があふれ出している
ステキな段平で、この人がいなかったらこの映画はなかったな、と思いました。

というわけで「まあ、話題作だしー」と見たのに、最後は興奮するわ涙出るわで
もう、のめりこみました。たぶん、DVD買うと思う(メイキングとかもついてる
一番いいやつ(笑))。

けっして明るく前向きなだけの話じゃないからこそ、かえって、ものすごく力強K
見てるほうもなんか燃えてくるような感じがしました。そして力石を見て、
私なんか余分なものだらけだから痩せるのきっと簡単だわ、と、帰り道に
ダイエット本を2冊ほど買っちゃいました(笑)。
by tohko_h | 2011-02-18 11:41 | watching