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「菜種晴れ」山本一力

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「菜種晴れ」 山本一力
最近、書店をうろついてハシゴまでしても、
読みたい本が無くて手ぶらで帰宅することが
割と多くて寂しい。そこで「読んだことの
ないジャンルの本に手を出し読書の守備範囲、
拡大してはどうだろうか」と、今まで殆ど
読んでこなかった(「澪つくし料理帖」除く)
時代小説を何か…と手にとった1冊です。


千葉の菜種農家の娘が、江戸の大きな油問屋の跡取りとして幼女に出されて
からの人生を描いた女性の一代記もの。
ヒロインの二三(ふみ)は、賢くてしつけの行き届いた素直でまっすぐな
少女でありながら、日舞の先生や店の者たちに特別な存在だと思わせる
何かを持ったカリスマ性のある少女。途中までは、彼女が恵まれた環境の
中で伸びやかに育っていく様子を江戸の街の姿を背景に生き生きと描いた
感じのお話になっています。ところが、油問屋を襲ったつらい運命が
彼女に襲い掛かり、苦難とのおいかけっこのような日々が始まるのだった…

前半のヒロインが若木のように健やかに育っていく様子とそれを見守る
周囲の大人たちの愛情の注ぎ方は読んでいてなんだか元気がでる明るいトーン。
後半、いきなり運命が転げ落ちてからの展開のどんよりっぷりとのギャップが
すごいです。そこを乗り越える力強い姿こそ作者が描きたかったところなの
かもしれませんが、その…今の言葉で言うと「あ、不幸が来る」という悲劇フラグが
分かりやすくて「またヒロインが…ううう」と、つらい出来事が起こる前から
読んでいるほうはすでにつらくなっているという感じです。でもつらくなりつつも
最後まで一気に読んでしまったのでした。

そしてこの物語の第2の主人公は天ぷら。
ヒロインは、千葉の実家で幼児のころから母直伝で天ぷらの揚げ方を習って
いたという達人でもあり、江戸の大店の幼女になった後もその腕前を披露し
養父母を助けたりします。このてんぷらを揚げるシーンが、ものすごく、
おいしそうなのです…食べていておなかのへる1冊だったのは間違いありません。
by tohko_h | 2011-06-20 22:38 | reading