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「トロイメライ」池上永一

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「トロイメライ」 池上永一
「テンペスト」を読んで、この作者が描く琉球王国後期の
物語に興味を抱いたので、こちらも読んでみることに。
王家やエリート役人たちが中心の「テンペスト」に対し、
こちらは、町の人々のトラブル解決に、若き新米の
岡っ引きがあたるという人情系連作短編集である。
歴史的ロマン!的な派手さは無いけれど、貧しくも
心優しく明るい庶民の姿が生き生きしていて魅力的。


「テンペスト」の人間以外の主役といえば、豪華な首里城でしたが、こちらの
シリーズの主役は、琉球グルメ。主人公の若者・武太や、町の人々が通う
食堂で供されるご飯の描写がたまりません。といっても普段は、沖縄料理って
さほど好きじゃないんだけどね。なぜか、作中に出てくるジューシー(混ぜご飯)や
三枚肉の煮こみ(これは好きだな普通に(笑))、ジーマミー豆腐などが、
美味しそうすぎてお腹が減ります。

人情ものとしてのストーリー展開も巧み。銭形平次風の義賊が出てきたり、痛快な
面もあるけれど、貧しい家の子や孤独な老人の運命など、奇麗事のハッピーエンド
では終わらない切ないところが現実的でもある。王宮の美男美女物語だった
「テンペスト」のほうがドラマ化にはふさわしいけれど、しみじみ読んで小説として
おいしく何度でも味わいたいのは、この「テンペスト」のほうかもしれません。
テンペストに出てきたキャラクターも「ウォーリーをさがせ」的にちりばめられて
いるので、どちらも読んでみるなら「テンペスト」を読んでからのお楽しみ♪ってことで。
by tohko_h | 2011-07-06 14:43 | reading