「廃墟のとき」明野照葉

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「廃墟のとき」 明野照葉
離婚し、仕事も辞め、からっぽな自分に愛想を
つかしきっている美砂・38歳。「あと10か月で
自殺しよう。その前に、周囲の人たちから「素敵な
女実業家になった」と羨望を浴びまくってやろう」と
決め、会社員時代の貯金で身を飾り、名ばかりの
会社を設立し「起業家ごっこ」に精を出すことにした。


元夫、元彼、家族、女友達などに会い、充実した自分を誇示して刹那な満足感に
浸る毎日はそれなりにやりがいがあったが、別の虚しさに襲われはじめたころ…
ふたりの男と出会い、彼女の「計画」は思わぬ方へ転がり出して…

「イヤな気分になる本」を読みたい時は明野さんに限る、と心のどこかでいつも
あてにしている作家さんの最新文庫です。
イヤな気分っていっても、本当に読んでいるのがいやになるほどの不快感って
意味じゃなくて「このどんより感、ううう。たまらない!」と、どこかで興奮とか快感が
セットでついてくる感じがクセになる「イヤな感じだからこそ読みたくなる」類の本の
ことです、もちろん(本当に本そのものや作者にまで嫌悪感を持ってる本は別に
ありますがまたそれは別の機会に)。

そんなどんより本の横綱といえばやはり桐野夏生さん。東も西も圧倒的に!
そして大関といえば私のなかではこの明野さんと沼田まほかるさんです。

さて、今回の明野さんの話、ヒロインが私と同じ年、というのと、期限を切った死、
というテーマに心惹かれました。私は「あと1年頑張って死のう」とか思ったことは
ないですが、ものすごくつらいことがあったときに「死ぬことと比べればまあ、
なんとかなるかもしれない」と、死ぬことを敢えて意識して自分を鼓舞したことは
何度かあり、逆に「死ぬと決めてあとを気ままにすごす」というヒロイン美砂の
思いつきも、ちょっと面白いかも、と思ったのです。

期限つきプリティーウーマンって感じで、エステだ洋服だグルメだ、と自分に
ドバドバとお金を使う描写はちょっと興奮(それだけの貯金額があったところは
同い年としてガーン、でしたが(苦笑))。偽会社を作ったらホントに仕事の依頼が
来てあれれ?みたいな展開もなんだか面白くなりそうな予感。

しかしこのお話、後半は割とありきたりなラブサスペンスになっちゃうんのがちょっと
惜しかった。対照的な二人の男が現れてそのあいだを揺れ動くうちに、優雅で
余裕しゃくしゃくだったはずの自殺計画が…という感じなんだけど、38歳の女性が
ここまで色恋最優先になるかなー(しかも自分で計画的に自殺しようと思うくらい
疲れているのに冷静で頭もよさそうな女性が)とちょっと読んでて胸やけして
きました。でも、読む2時間サスペンスドラマとしてはラブシーンあり買いものなど
豪華シーンあり家族との心温まる会話あり、の盛りだくさんで濃厚な1冊だったとは、
思います。
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by tohko_h | 2011-08-14 12:59 | reading