「葉桜」橋本紡

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「葉桜」 橋本紡
佳奈は、書道教室に通う高校生。継野先生への
淡い思いは、半紙に墨が染み込むように、
しだいにくっきりと「好き」という輪郭を持って、
立ちあがってくる。しかし、思いがどれだけ強く
なっても行き場は無い。継野にはふんわりと
優しげで可愛い奥さんがいるし、佳奈は、その
奥さんのことも普通に好きなのだ。


書道教室という古風な習い事、白いブラウスを最上のおしゃれだと思うヒロイン、
少し浮世離れした先生のたたずまい、墨をする音、夏の午後のなまぬるい空気。
ノスタルジックな舞台装置の中、物語は静かに進んでいきます。
その中で、ヒロインの思いだけが騒がしく、心の中で暴れはじめます。
好きな人に向いあう静かな書道の時間。
だけど気持ちは実は激しい。
このギャップが、恋愛だな、と思います。
静けさを愛しながら、激しい気持ちを素直に受け入れるヒロインの清純さ、
ごまかしのなさがとても可憐です。

書道教室という設定は「静けさ」の他にも、人の気持ちを語る言葉の豊かさ、を
この物語に与えています。
書道の練習で書く和歌は、恋のうた。
先生のかつての書道のライバルが模写した漢文は、激しい心の現れ。
「好き」と言うよりも強い好き。
「嫌い」と言うよりも痛い嫌い。
そういったものが、筆で書かれた文字として登場するんですよね。
そういうところにも惹かれました。

もしこの小説を読んで気に入ったら、私のなかで同じ引き出しに入っている純愛漫画
「積極」(谷川史子)もぜひ味わってほしいです。セット読み推奨!

青林檎与へしことを唯一の積極として別れ来にけり 河野裕子←この名歌がモチーフに
なってる素晴らしい初恋漫画です。
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by tohko_h | 2011-09-03 19:57 | reading