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「けむたい後輩」柚木麻子

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「けむたい後輩」柚木麻子
昔は少女詩人・今はただの地味目な女子大生に
なってしまっている栞子。それでもなぜか栞子を
慕う病弱で一途な後輩・真実子。そんな真美子を
「あんな先輩に翻弄されるなんて」と不憫に思い
気にかけている美人の美里。横浜の、立地条件とか
がフェリスっぽい架空の女子大を舞台にした、
女の優越感・劣等感・男に選ばれないあせりなどを
描いた、けむたくモヤモヤな青春小説。


タイトルは、栞子から見た真美子のことをさしているのだと思います。
かつて詩の書ける少女として少しだけスターだったけれど今は何も書けず
平凡な大学生として、教授との恋愛すらも危うくなっている栞子にとって
過去の幻影みたいな「才能のある先輩☆」と勝手に慕ってくる真美子は
ウザい後輩なのですから。でも、男に粗末にされ、大学でも笑いものにされ、
誰にも素敵、と思われていない自分を慕ってくれている真美子が支えなのも
分かってて、ウザいけど必要、なわけですね。その億劫さを、栞子がいつも
吸ってるタバコにからめて「けむたい」と表現してるのかな、と。

これ、愉快不愉快でいえば、かなり不愉快な小説です。
友情も恋愛も全部どこか薄暗くてもっさり煙ってる感じ。
大学生たちが出てくる青春モノなのに、きらめき、ときめき、かがやき
などの、世間一般が青春に期待する感じがまるで感じられません。
恋愛は想いの温度差でうまくいかなくなり、女同士の付き合いはどこか
上下関係をはらんだ危ういものが多く(その中で、美人の美里が真美子を
ずっと思いやり続ける姿にはホッとします)、就職活動などの進路でも
シビアな展開が続きます。そのシビアさが「痛っ」と自分にしみた瞬間
「う、私も学生時代って、ものすごくぱっとしてなかった、特に
恋愛は…! あ、就職活動も失敗した」と、トラウマが次々とマトリョーシカ
のように飛び出してきて呆然としてしまいました。

かつてのスターだった栞子の気持ちがなんでスターになった経験が無かった
私にしみるんだよ、やめてくれよ!と思いつつ、しみました(涙目)。
おそらく「地方の高校ではそこそこうまくやってたのに東京のマンモス大学で
埋もれてしまい、それをごまかすかのようにものすごくつまらない男と
つきあってしまった」というダメダメな流れが、栞子の「勘違いしてるふり」
を必死で続けて大学に居場所を確保しようと、それがダメなら男の隣に、
と必死になり疎まれる、という姿に重なっちゃったからかなぁ。

というわけで、コレを読んで「ヘンな女が出てくる本だったわ」と思える人は
幸福です。で、もし私のように「嫌だ、何これ…」と古傷のかさぶたを直撃
されてしまった人、どこかで会えたらお酒飲みながら「当時どれだけ悲惨だったか」
を語り合いたいです(笑)!
by tohko_h | 2012-03-02 11:01 | reading