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今さらジロー。

「鉄道員」(ぽっぽや) 浅田次郎

Yakubiさん、すみません! タイトル、パクってます(しかも事後報告)

でも、まさにそういう感じだったのです。
昨年の秋ごろのことでした。ある方から、浅田次郎さんの「蒼穹の昴」
勧めていただいて「中国モノで4冊もあるのか…」と自信がなかったので、
とりあえず「蒼穹の昴」は置いておいて、短編とか、他の浅田作品を数冊読んで
みたんです。そしたら、どれもすごく文章がサラッと気持ちよく物語も
すばらしく面白かったので、「蒼穹~」も2日間集中して読んで号泣(昨年の
読み納めは「蒼穹の昴」でした)今は「好きな作家さんは?」と訊かれると
「浅田次郎さん!」と即答、母や妹にも勧める、完全なファンになりました。
だけど、浅田さんの直木賞受賞作で、まっさきに映画化されたこの「鉄道員」という
短編集は、読んでいなかったんです。「次は『鉄道員』かな」と思って書店の
「あ」の欄を見るんだけど(浅田ファンになってから、文庫売り場の著者別の
「浅田次郎」のところを最初にチェックするクセがついた。今は読んでしまった本が
多くて、まだこれらを読んでいない人がうらやましくてしかたない状態(笑))、
たまたま私が行きつけてる書店にはあまりなくて…昨日、江古田で入手しました。
で、昨夜~今日の通勤電車で読みました。「姫椿」など、他の浅田さんの短編集は
読んだことがあるので、既に、短編もものすごく上手で読み応えがある、という
イメージはあったんですが、この「鉄道員」も素敵な短編集でした。

「鉄道員」北海道の廃線間際の駅長の1日。子や妻が亡くなった日も、彼は駅にいた…
「ラブ・レター」戸籍を売った男に宛てた、顔も見たことの無い妻が書いた愛の手紙。
「悪魔」昭和の裕福な家庭が、一人の家庭教師の訪れとともに堕ちていく…ホラー風味。
「角筈にて」少年時代に父親に捨てられた過去を持つ男が、大人になって過去を振り返る。
「伽羅」アパレルメーカーの営業マンが出会う、ブティックの謎の美女オーナー。
「うらぼんえ」自分を裏切った夫の身内の新盆に参列することになった妻の気持ちは?
「ろくでなしのサンタ」三太というろくでなしが、見知らぬ家族のサンタクロースに…
「オリヲン座からの招待状」閉館が決まった京都の映画館にかけつけた元夫婦の思い。

とりあえず、電車の中で「ラブ・レター」読むのはヤバいです。私は泣きました。
文中の手紙のある1行で、号泣。「鉄道員」は、北海道弁が懐かしかったけど、
高倉健さんと広末涼子ちゃんが映画でやったのをちらっと見たので先入観ありで
読むことになって少し残念。活字だけであの廃線の駅を味わいつくしたかった。
ホラーな「悪魔」や「伽羅」については、浅田さんの語り口が泣かせだけではなく
恐怖も引き出す力を持つことを知りました。しかも心理的にじわっとね。
「ろくでなしの三太」とか「オリヲン座からの招待状」あたりが、「プリズンホテル」で
魅せられた、どこにでもいそうだけどかわいい人たちが出てきて浅田さんぽい。
「角筈にて」は、主人公の育ての父や兄弟となった人たちの優しさに胸が温かくなった。
妻のキャラもかわいいし。そして「うらぼんえ」…私は幸い、夫の親族の集いに行っても
肩身の狭い思いってしてないんですが(夫の両親が私の至らないところが目立たない
ように腐心してくれてるので・・・)、自分の身内のでもそうだけど、親戚が集まるとき
特有のズケズケした空気みたいなものがすごくリアルに描かれていてびっくり。
これ、向田邦子さんの「思い出トランプ」の中に入ってても違和感がないかもしれない。
男性作家が、ここまで家庭の猥雑なあれこれを書けるって、怖いし、すごい。
多分、自分が17歳とかだったら「ラブ・レター」の美しい手紙や「鉄道員」の
しんみりした空気やラストシーンの哀切で凛々しい雰囲気に胸を熱くして
コミカルな「ろくでなしの三太」あたりで和んでいて、この「うらぼんえ」は、
スルーしてたかもしれませんが、30歳すぎて読んだのですごくハマりました。
てことで、高校時代に愛読していた向田邦子さんも再読したくなりました。
by tohko_h | 2006-08-02 18:09 | reading