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「薄闇シルエット」角田光代

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「薄闇シルエット」 角田光代

ハナ(37歳)は、下北沢で友達のチサト(同じく37歳)と
一緒に、イギリスもの中心の古着屋を経営している。
同年代の人より収入もあるし、気の合う恋人もいるし
人生は割と満足のゆくものだと思っている。
が、しかし。
ある日、友達を交えて飲んでいた居酒屋で、恋人の
タケダが「年も年だし、結婚もちゃんとしてやるつもり」
と話しているのを聞いて、その場ではテキトーに
「だいぶ遅れたけど結局ハッピーをものにした女」風の
顔をしてお茶を濁していたものの、いらいらしていた。
私は別に結婚なんて、したくないんだけどな。

それをきっかけに、ハナは、沢山の「したくないこと」「イヤなこと」に
遭遇して、そのたびに「私のほうがいいや」と心の中で勝ち組気分になる。

結婚、したくない。店をダサいブランドものでかためること、したくない。
専業主婦の母や妹みたいなのも、いや。正社員になったタケダくんみたいに
普通のサラリーマンっていうのも、いや。チサトみたいに、古着屋として
売れるためならなんでもしたい、というのも、いや。
彼女の人生には、「したくないこと」がとても多いのだ。
周囲の「したくないこともしている」人たちと「したくないことはしなくてもいいじゃん」と
思うハナとの摩擦。

それを通して、仕事ってなんだろう、恋愛ってなんだろう、みたいなことを
軽いタッチで問題提起してるっていう感じの小説なのかな。

実は、角田さんって何冊読んでも好きになれない作家さんのひとりなんだけど、
だけどなぜか新作を割と読んでるんですね。
とりあげるテーマというか、目のつけどころに興味があるので、
好きなタイプの書き手じゃなくても読んでしまうのです。
苦手なんだけど動向がなんか気になる人気者の友達、みたいな感じ。
今回も、まさにそういう感じの小説でした。
好きなことばっかりやってるもんね、私! イヤなことも引き受けて生きてる
他の人たちより自由で満足いってるもんね!とハナが主張するたびに
「そうやって勝ち負けにこだわってるあなたがいちばんがんじがらめになってて
悪あがきしてるみたいに見えるよ」と突っ込みを入れつつ読みました。

私自身、自分の嫌なこと、苦手なことのほうが、好きなことやものより多い気がして
たまに「なんか自分ちっちゃい」と思うことはたまにあるので、ヒロインが「したくないこと」
だけは判ってて、それに対してとても攻撃的になる心情はわからなくもないんだけど。

あと、個人的にこの人の文章の崩し方があまり好きじゃないんですよねー。
文章からいいにおいがしてこない、っていうか。単に好みじゃないといえば
それまでなんですけどね。
by tohko_h | 2006-12-05 08:43 | reading