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「たまには、時事ネタ」 斎藤美奈子

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「たまには、時事ネタ」
斎藤美奈子・著
中央公論新社
「婦人公論」連載の人気コラム
「女のニュース男のニュース」の
2001~2006年分を、
大幅に加筆訂正して単行本化。
文芸評論家が読み解くニュースの数々。


斎藤美奈子さんの評論の仕方って、斬る、というより、突っ込む、という言葉を
敢えて使いたくなるような丁寧さが好き。丁寧な分析、多角的な視点で
問題に深く細かく触れつつ、キャッチーで面白い言葉で上手に書いているから
評論、とか、文芸、というと硬そうだけど、読み物としてわーっと読めてしまうのが魅力。
そのセンスは、ニュースを論じるのにも向いているなーという印象。
ときにはたとえ話、ときには井戸端会議的下世話なツッコミを炸裂させつつ
「何で?」「これおかしい」と疑問に思ったこと、腹立ったことを真摯に最後まで
投げないで自分なりに考えて、論じて、どの章も説得力は抜群。
いちばん笑ったのは、2002年にお札に樋口一葉の肖像が登場したときの回のオチ。
(お札に載せられるような女性の)人材不足といったけれども、これは女性の
人材がほんとに不足していたのではなく、伝記や教科書が女性の業績にきちんと
目を向けてこなかった結果だろう。男女共同参画社会というならそこから見直すべき
だけど、一番怒っているのは一生お金で苦労した一葉自身かもしれない。
「馬鹿にしないでお呉れよ」なんて、あの世で歯がみしているのではないだろうか。

確かに、生活苦=人生みたいだった彼女がお金の肖像って…笑っちゃいけないけど
なんだかなーではある。

シュワちゃんがカリフォルニアの知事になった、というニュースが流れたときには
強そうなリーダーってどうよ?というところから現都知事の話に。斎藤さんのお友達は
「東京には近いうちに大地震が来るはずで、そのときに慎太郎が「私について来なさい」
と言ってくれそうな気がするから、支持されてるんじゃない? 地震のときに
お父さんが家にいると安心なのと同じ原理で」と言う。そして斎藤さんは、地震など
いろいろな生活不安が募っているときに強い態度で外敵を追い払ってくれそうな
アウトサイダーに人気が集まることに注目しつつも、大地震のことを考えると
ますます石原都知事は勘弁、と思うのだった。
平時にさえ外国人差別発言をくりかえし、テロを容認するかのような発言をし、
防災の日に戦車を出しかねない現都知事である。地震なんか起こった日には、
何を言い出すかわかったものではない。
災害のときに必要なのは水とカンパンと毛布だけではない。
危ない首長のおかげでもっと危ない目にあわないとも限らないんだよ。

防災の日に戦車、地震が起きたら三国人発言どころか、全アジアを敵に回すくらい
一瞬でやりそうだもんな、たしかにこの人・・・

こんな調子で、小気味よくここ数年の時事ネタ(もちろん小泉劇場や安倍さんの
影の薄さにも突っ込みは入ってます)をサクサクおさらいできて、ちょっと
賢くなった気分にもなっちゃった、そんな1冊です。
by tohko_h | 2007-01-09 22:07 | reading