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「100万分の1の恋人」 榊 邦彦

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「100万分の1の恋人」
榊 邦彦
帯うしろには「浅田次郎氏(選考委員)が
選んだ、恋愛小説の新しい光」とある。
それでつい手にとってみた恋愛小説。
これは「新潮エンターテイメント新人賞」
という毎回一人の作家が選考委員を
つとめる賞の受賞作品だったらしい。
その選考委員が浅田氏だった第2回の
受賞作なのでこのようなあおりに。
なるほど。
恋愛小説も好きだし期待して手にとった。

大学院を卒業して就職が決まった僕は、恋人・ミサキに
プロポーズをするが、彼女の返事はこうだった。
「私のお父さんね、病気なんだ」
ハンチントン病という遺伝性の難病を抱える父が沖縄の実家におり、
その病を患う可能性が自分にも50%あるという。
発病したら、今までの自分ではいられないかもしれない、という。
恋人の抱えている不安を抱きとめながら、僕も、どうしたらいいのか、
苦しみ、悩み、それでも今一緒にいる彼女を好きだと思う。
ふたりでともに静かにすごしながら出した結論は・・・

それにしても、恋人同士がどちらかの病や怪我で揺れ惑う話のときって
なぜ女性が病気方向の話が多いんだろう。とありがちな疑問を抱きながら
読みました。
文章はシンプルで明るくてすっきり読める。「ノルウェイの森」とか、
淡々とした小説を書いているときの村上春樹みたいな透明感もある。
でも、この小説の場合、ひっかかりが無さ過ぎて(少し極端な
表現とか、破綻していても印象に残るところとか)全部、無難。
人物の背景とかキャラクターも丁寧に描かれていて、破綻してたり
途中で何か変な矛盾が無い、という意味ではごく「まとも」なのだけど。
重くなる内容のはずなのに読後感が薄くて物足りなかった。
あの濃厚な浅田文学の書き手が、このおとなしめな小説を選んだとは
ちょっと、いや、かなり意外な気がした。

浅田氏の選評を新潮社のサイトで読んでくると、
「受賞作を出したくなかったというのが、私の本音である。しかし
選考委員がひとり、しかも昨年創設されたばかりの新人賞ともなれば、
受賞作ナシの結論は見識というよりわがままであろう。
よって絶対的基準ではなく、候補作相互の相対的比較に則って、
榊邦彦氏「ミサキへ」を推した。」とはっきり書いてある。
なるほど~・・・応募作の中では一番良い小説だったってことですね。

ちなみにこの賞、
第1回の審査員は石田衣良(学園ファンタジーみたいなのを選んだらしい)、
現在募集中の第3回は宮部みゆき、その次は江國香織の予定だとか。
フジテレビジョン共催らしいので、映像化しやすい作品が有利とか
そういう大人の事情は果たしてあるんでしょうか。第1回のときには
特にこれって何か展開してた記憶もないのだけど。
 
by tohko_h | 2007-01-25 14:33 | reading