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「スコーレNo.4」宮下奈都

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「スコーレNo.4」
宮下奈都

人生には4つの
小さな学校(スコーレ)がある。
家族、恋愛、仕事、そして――

骨董品店の三人姉妹の長女として生まれた麻子は、欲しいものを人と最後まで争ったことがない。すぐ下の妹、七葉のように欲しいものを人に渡さないほどの執着がない。親友のように仲のよい七葉は美しい子で、そのため子供の頃から可愛さで勝負することはあきらめていた麻子だったが、
骨董店で父親から美しいものを見せられて育った審美眼が認められ、
繊細な感受性を持った女性に成長していく。
丹念に重ねられた日常の描写から立ち上がる瑞々しさに
定評がある著者初の書下ろし長編(光文社サイトより)


1月後半にして、既に出ました、2007年自分的NO1候補の小説が!
さっそくノミネート☆

家族の中や、教室や、職場、そして恋人といるときに
「私ってあんまりかわいくないかも」「マイナーなほうかも」と
人知れずため息をついたり、特定の相手や何かに対して、
最初から勝負にならないしな、とひそかに負け判定を自分で下して
静かに諦めたりした経験。そういう些細な心のゆれが繊細に描かれている。
その描写がいちいち「ある!ある!」と、クイズ100人に聞きましたの
スタジオの観客状態(古いたとえ。判らない人はスルーお願いします)に
なってしまう感じ。
割と漫画や小説だと、思春期や大学時代っていうのは甘酸っぱかったり
いろいろ葛藤はあるんだけど楽しいよ、とか、まぶしいよ、と美化して
描かれがちだけど、それほど楽しくもなかったしキラキラでもなかったな、と
フィクションの中の輝かしい「若かった頃」の描かれ方に疑問を感じたことが
ある人がコレを読んだら「そうそう、こんなものだよね。いろいろうまく
いかないこともあったんだよね」と思ってしみじみしてしまう。

初恋ラッシュで中学の同級生が浮かれて声が上ずって、みたいな雰囲気が
嫌いだった麻子も、初めてある男の子を好きになってしまい
妹の七葉に「もし私がくねくねしてたら、教えてくれる?」と頼む。
こういう麻子の頑固さがかわいい。くねくね、こびこびしたっていいのに、と
今の自分は思う。でも当時はやっぱりできなかった。
自分には「くねくね」が似合わない硬い部分があるような気がしていたのだ。
なんとなく。まあ、妹には頼まなかったけど、いつだって「私って今
ヘンじゃないかな?」と好きな人関連では試行錯誤を続けていた気がする。

麻子は、頑固だけど、欲しいものに対する握力が妹の七葉と比べて弱く、
恋愛に関しても不器用で、好きな男の子に対しても行動的になれないし、
会社でも希望のところに配属されないで悩みながら働くようになる。
こう書くと、とてもグチっぽくて暗い小説みたいだけど、麻子の一人称は
とても落ち着いていて知的で爽やかなので、そういうさえない日常も「がんばれー」と
素直に応援しつつ読めるのだ。私もこんなことあったけどなんとかなったよ、
と話しかけたくなるような感じ。
要領がいいとは言えない麻子だけど、最後にはとても彼女らしい自然な感じで
幸福になって終わるので、読んだ後にすっきり元気になりました。
「私って今、なんかイマイチなんだよね」と漠然と凹んでるときの
デトックス本としてお薦めです。
by tohko_h | 2007-01-26 17:59 | reading