人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「レインツリーの国」 有川浩

「レインツリーの国」 有川浩_a0079948_16513392.jpg
「レインツリーの国」
有川浩

きっかけは「忘れられない本」。
そこから始まったメールの交換。
あなたを想う。心が揺れる。
でも、会うことはできません。ごめんなさい。
かたくなに会うのを拒む彼女には、
ある理由があった―。
青春恋愛小説に、新スタンダード。(以上、帯より)



最近、絶好調の有川浩。図書館モノ(荒唐無稽なSF風味)と
自衛隊モノ、というジャンルを自分で作っちゃう、というなかなか
頼もしい作家さんです。こちらはその「図書館モノ」の小説の中に
出てくる小説を作者自らが書いたという・・・劇中劇ならぬ小説中小説。
もとの「図書館戦争」は読んでいなかったのですが、こちら、メディアワークス発行。
そして「レインツリーの国」は、新潮社。版元を超えたコラボ。

主人公の伸行は、活発で関西弁まじりでよくしゃべる元気で明るい20代男性。
ある日、ふと「高校時代にハマってたあの小説」についてネットで検索した彼は
「レインツリーの国」というホームページに行き着く。そこに書いてある感想は
とても生き生きとしていて「この人とこの作品の話がしたい!」と思い切ってメール。
管理人の「ひとみ」も、喜んでメールをくれた。しだいに、本の話から、
軽い冗談っぽい恋愛っぽいやりとりまでするようになるふたり。伸行は、しだいに
「彼女と会いたい」と思うようになる。しかし、実際にこぎつけたデートでは、
メールでは機転が効いて面白そうな女の子だったはずの「ひとみ」は、
かたくなで少しノロマで、違和感と軽い苛立ちを覚える。ひとみが雑踏の中で
少しテンポが悪いのには、ある「わけ」があった・・・



彼女は、難聴だったのだ。会ってみて違和感を感じた彼女の行動の
ぎこちなさは、音が聞きずらくて起こったものばかりだった。
そして、重たすぎるまっすぐな髪も、補聴器をごまかすためのものだった・・・

すべてを知った彼は、それでもあきらめられないほど、メールのやりとりで
すでにひとみに惚れてしまっていた。彼は、彼女の障害を理解して
付き合いたいと願うが・・・

私は残念ながら、メール普及前に恋愛をしていた旧世代なので、
男女がメールで惹かれあっていくさまが、ちょっと羨ましかった。
私の世代だと、せいぜい恋人とは長電話が関の山だったから。

でも、こうしてブログをやっていて、実際にブログを通してリアルに
出会った人たちもたくさんいることを思えば、伸行の心情は、なんとなく、
わかる。お互いにちょっとクサい言葉のメールを送りあって「そっちの
青春菌がうつった」なんてはしゃいでいる若いふたりはかわいい。
しかし、ひとみの障害を伸行が知ってからの展開はかなり重い。
メールで「これだけ僕は難聴のことを勉強したから君を理解して
付き合いたい。もっと心を開いてほしい」と、かなり長くて理屈っぽい
メールで、ひとみをくどくのだ。このへん、ちょっと中だるみ。
伸行にいいよるライバルの女の子が、恋愛上手で(江古田ちゃん用語で
いうところの「猛禽」なんだろうなあ)魅力的。
by tohko_h | 2007-02-09 16:52 | reading