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「檸檬のころ」 豊島ミホ

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「檸檬のころ」 豊島ミホ
地方都市の県立高校を舞台に繰り広げられる
普通の高校生たちの卒業までの物語。
それぞれの章で主人公がかわるのだけど、
別の章で前の章の主人公がちらっと出て
きたり、おなじ学校でおなじ時間が流れてる
んだな、と思いながら読んだ。
大恋愛も大事件も大逆転もない、
常温で生きている普通の青春だって
ひとりひとりにとっては、いろいろ生きにくかったり
せつなかったり 盛り上がったりドラマなんだ、ということを改めて思い知った気がする。
大多数の「平凡な高校生だった人」にとっては、心当たりのある空気感が全編に漂う。
こんな人、クラスにいたかも、と、名前や顔まで思い出せなくても、なんとなく
懐かしい気持ちになったり。


青春小説の主人公たちって、自分たちの青春の終わりを知らずにとにかく
熱い人たちが多いけど、このお話に出てくる高校生たちは、自分たちが
学校で生きている「いま」が、いつか終わる、ずっとは続かない、このままじゃ
いられない、ということをちゃんと知っている。知っているからこそ、
好きな人と会えなくなる、とか、友達への気持ちが昔と違う、とか、
そういう変化を受け止めて、静かに悲しんだり寂しく思ったりしている。
その「静かな感情の揺れ」が読者の心も揺する佳作。

私の場合、地方高校から東京に進学を機に出てきたので、最終章で
東京進学する女の子が好きな男の子とお別れする話は特にグッときました。
そういう相手がいたわけじゃないけど。
by tohko_h | 2007-02-23 14:46 | reading