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「輪違屋糸里」 浅田次郎

「輪違屋糸里」 (上)(下)
浅田次郎
浅田氏の「壬生義士伝」が、新撰組に実際に入っていた男たちの語りや、
その身内の人たちの語りで構成された、内側から描いた新撰組だったのに対して、
こちらの「輪違屋糸里」は、どちらかというと、新撰組たちを寄宿させた壬生の人たちや
その女房、隊士を愛した女たちなど、外側から見つめた新撰組を描いたという感じ。
内と外、表と裏、というか。
輪違屋という置屋の芸妓・糸里の名前がそのままタイトルになっているが
鮮烈な印象を持つ女性が多く出てくるので、ヒロインは彼女ひとりではなく
「彼女たち」という感じ。
土方を一途に慕うが、子ども扱いされているのが悔しい糸里と、
隊士・平山五郎と夢のように幸運な両惚れ(両思い)の
間柄の吉栄。このふたりの遊女は、吉原のように身体を売るのではなく
芸を売るのが基本らしいんだけど、それぞれ新撰組の愛する男の運命に
巻き込まれても倒れないしなやかさとたおやかさが魅力的だ。
そして、寄宿先の気丈な女房・お勝やおまさは、少し頼りない主人に苦労
しながらも、気の利く、頭の回転の速い女性たちだ。隊士の無茶に対して
母のように怒ることもできるし、傷つくこともあるところが人間味溢れている。
そして、芹沢の愛人で呉服屋の取り立ても自分で行く江戸前の女・お梅。
幼いころ、人買いに売られそうになったところを逃げ出し、美貌と、目から
鼻に抜けるような賢さで生き延びて京に上ってきた女性。京言葉が雅やかな
遊女たちや奥さんたちと比べて、江戸の言葉で少しやさぐれたように話すし、
床のあれこれに関しても貪欲なイメージ。
この5人の女性たちのキャラがすごくたっている。
そして、酒乱で乱暴だけど魅力的なこの物語の芹沢鴨は、浅田初期のヤクザものに
出てくるいい男の系譜に連なるアンチヒーローとして鮮烈な光と存在感を放っている。
「壬生義士伝」のような痛々しさ、せつなさは無いけど、荒々しさと破滅のにおいのする
男たち、彼らを愛する女たちの美しさに酔いつつ読めた。
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by tohko_h | 2007-03-24 08:32 | reading