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「影踏み」横山秀夫

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「影踏み」 横山秀夫
家の中の人が寝静まってから忍び込んで
盗みを働く泥棒を「ノビ」と呼ぶそうだ。
真壁修一・通称ノビ壁が刑務所から出所し
地元の町に舞い戻るところから物語は
始まる。所轄の警察所、自分が捕まった
押し入った相手、待っている恋人など
捕まる前の自分を知っている人がたくさん
いる町に帰ってくる犯罪者って珍しいと
思った。誰も自分を知らない町で
やり直すっていう選択肢もあるだろうに、と。
この物語は、この、舞い戻ってきた真壁が巻き込まれていく
7つの事件を描いた連作短編集である。真壁が困ったときに
相談するのはただひとり、15年前の実家の火事で母とともに
死んでしまった双子の弟・啓二。耳の中に声が響いて、
ふたりきりの会話ができるのだ。かつて、同じ女性を愛してしまい
苦しみあった兄弟は、こうして「ふたりでひとり」になっていた。
(双子とはいえ、弟のほうは亡くなった年齢のままなので、15歳年の差が
できちゃっているのもポイント)。かつての同業者や恋人などを
悪意から救う真壁は、犯罪者が主人公、ということを忘れてしまうほど
真摯で誠実な男だ。獄中の男にサンタを頼まれる話は、浅田次郎の短編に
似た話があるんだけど、横山さんのも泣けた。
ミステリーと呼ぶには、非現実的な設定(弟の霊魂が兄とともに生きている)も
あるし、謎解きだけで読むと物足りない面もあるけれど、ドラマにしたら
面白いだろうな、と思った。キャラクターがよく描かれていて、ストーリーの
力がとてもつよいので。
by tohko_h | 2007-04-23 23:11 | reading